2025-01-01から1ヶ月間の記事一覧
富が増す──なんとも縁起の良い名を持つ温泉郷。1913年の開湯(創業)という歴史。かつて令和天皇が瑞牆(みずがき)山登山の前夜に宿泊した由緒を感じさせる温泉宿。しかし、アクセスは決して良くない。それでも、一度は訪れる価値がある。日本でも珍しい放…
新宿という街には、独特のリズムがある。昼夜を問わず人が溢れ、狂騒的な喧騒に包まれながらも、その隙間に時折、静けさが顔をのぞかせる。 令和七年1月27日(月)、鈴木常吉の『思ひで』を口ずさみながら、新宿のアパートから歩いて歌舞伎町に向かう。税務…
JR蒲田駅東口から徒歩13分、その温泉は、やや不便な場所にある。歩みを重ねるごとに街のざわめきが遠ざかり、静寂と期待感が混ざり合う。住宅街に入り、出村通りを蒲田行進曲。かつて「キネマの天地」と呼ばれたこの地だが、松竹蒲田撮影所の面影は漂わない…
サウナが苦手だった。小籠包じゃあるまいし、なぜ蒸される?ヘブンである温泉に入ればいいではないか。しかし、原因と解決策がわかった。伊豆の空気が教えてくれた。 静岡県の西の端、伊豆の片隅に「松崎」という日本でいちばん小さな町がある。人口は5000人…
大江戸線「豊島園駅」のA2出口を飛び出すと心地よい風が吹く。地下奥深い大江戸線だから余計だ。都庁前駅から18分。ここに東京を代表する名湯がある。人が少ない通りを200メートル歩くと、閑静な住宅街に巨大な温泉施設が現れる。目の前は本格パスタとワイン…
">古代の温泉はすべて野湯だった。野湯と言えばカッコいいが、野趣に富んだ世界とは程遠いものもある。どれくらいの距離かと言えば天国と地獄。 "> ">2016年の秋、仕事を手伝っていた登山家のエヴェレスト遠征に同行した。チベット側からのアタック。首都ラ…
温泉ソムリエの資格を持っていると、「どこがおすすめ?」と訊かれる。答えは「浴槽の写真を見て気持ちよさそうなところ」。良いワインを紙コップで飲んでも真価が半減し、家と同じ湯でも浴槽が広いと気持ちよくなるように、湯よりも器のほうが大切。漫画『…
「天狗温泉 浅間山荘」に源泉が復活したのは1995年(平成7年)。1972年(昭和47年)2月に起きた「あさま山荘事件」と同じ名前の宿。平仮名と漢字で同じ長野県だが別。間違えて突入する湯客も多そうだ。歴史は浅いが日本屈指の名湯がある。泉質は「単純鉄冷鉱…
佐藤泰志の小説『オーバー・フェンス』がAmazonから届いたのは4月に入ってすぐだった。2020年の春。世は初めて経験するコロナ禍の緊急事態宣言に揺れていた。仕事を終えて北新宿のアパートに帰り、堅めに揚げたポテトチップス、ベビーチーズ、辛口のカルパス…
温泉の効能に「癒し」がある。病気や怪我が回復しなくても癒しが得られるのは尊い。「ほぐしの達人」などのマッサージのようなもの。道の駅「大滝温泉」は目の前に荒川が流れる埼玉県と山梨県の県境の山奥・大滝村にある。深さ1000mから湧き出す日帰り温泉「…
温泉の文化史(歴史)〜古事記から混浴からAI仮想湯治まで、2000年の湯の旅
ここまで凄い湯〜トピアが日本でもヨーロッパでもなく、釜山にあるとは思わなかった。韓国最古の温泉である東莱温泉(トンネ・オンチョン)は、新羅時代の王も立ち寄ったという歴史が残る。一羽の鶴が怪我した足を温泉につけたら完治して飛んでいった白鶴伝…
山形県南東部、南陽市に位置する赤湯温泉。その歴史は深く、開湯から900年以上の時を刻んでいる。 名の由来は、1093年。源義綱の家臣がこの温泉で傷を癒した際、傷による出血で湯が真っ赤に染まったことから 「赤湯」 と呼ばれるようになった。開湯は弘法大…
木曽の霊峰・御嶽に登るクライマーに薦めたい宿がある。御嶽に登るときは脚を癒やす名湯『木曽温泉ホテル』 木曽温泉ホテル 泉質 料理 木曽温泉ホテル 外観から察しがつくように、ホテルより旅館のほうがしっくりくる。料金は1泊2食付きで1万円。御嶽の労を…
クライマー憧れの山が雪の八甲田山。そして下山後に身を沈める酸ヶ湯温泉。 開湯は 1684年(貞享元年)。最初は「鹿の湯」と呼ばれた。八甲田連峰の西麓、標高約900mに位置し、「世界一雪が降る温泉地」 として知られる。毎年11月になると、「酸ヶ湯温泉の積…
物書きという渡世人をやっていると全国津々浦々を旅する。各地の湯宿のお世話になり、地元の人と知り合うことも多い。ふるさとに素晴らしい宿があっても地元のひとは素晴らしさを知らない。わざわざお金を払って近所の宿に泊まるなんてしない。たとえば伊豆…
標高2450mの山の中にゴージャスな天然温泉がある。と言ってもクライマー以外はピンとこないだろう。場所は富山県の標高3,015メートルの立山(たてやま)。古来より山岳信仰が強く、静岡の富士山、石川の白山と並んで日本三霊山に数えられる神聖な山。一般的…
そこに山があるからではなく、そこに温泉があるから山に行くことが多い。下山後に寄る温泉は事前にチェックするが、うれしいのは偶然の出逢い。当初は大菩薩峠から下りたら温泉施設『大菩薩の湯』に浸かる予定だった。 2月27日に登り始める前、雲峰寺を過ぎ…
年を越す、新年を迎えるのは名湯や大浴場もいいが、独りだけの小さな浴槽もいい。そこが小さな宇宙空間になる。そんな時をかける湯宿が和歌山にある。 アクセス・料金 和歌山県田辺市新屋敷町15。「紀伊田辺」駅から1キロ圏内。徒歩8分、海までも徒歩2分。20…