
温泉は「十湯十色」と呼ばれるように、泉質は全部で10種類あり、泉質を知っておくと温泉の愉しみがバズりまくる。今回紹介するのは、消毒薬のような香りと茶褐色の湯が特徴の 「含よう素泉(がんようそせん)」。ヨウ素を多く含む珍しい泉質で、「二酸化炭素泉」「含鉄泉」「放射能泉」と並ぶ 稀少泉質の仲間 に数えられることもある。
含よう素泉とは

含よう素泉とは、温泉水1kg中に ヨウ化物イオン(I⁻)を10mg以上含む温泉 を指す。温泉分析書では「含よう素-ナトリウム-塩化物強塩温泉」などと表記されることが多く、塩分の多い塩化物泉と一緒に現れるケースが多い。
ヨウ素と聞くと、傷薬やうがい薬を思い浮かべる人も多いだろう。あの茶色い消毒液の主成分がヨウ素だ。強い酸化力を持ち、細菌やウイルスを抑える働きがある。そのため含よう素泉は、昔から 「体質改善の湯」 と呼ばれてきた。
全身の代謝を促進し、血流を整える働きがあるとされ、コレステロールの低下や慢性疲労の改善などを期待して湯治に訪れる人も多い。派手な刺激はないが、じわじわと身体の調子を整えてくれる、いわば “温泉版の薬湯” のような存在だ。
茶褐色の湯と薬のような香り

含よう素泉の見た目は、茶褐色から黒褐色のものが多い。ヨウ素を含む地下水が空気に触れて酸化することで、色が濃く見えるためだ。透明な温泉が多い中で、この濃い色の湯は一目で個性がわかる。
匂いも独特で、消毒薬のような薬品系の香りを感じることが多い。これはヨウ素そのものの匂い。温泉に顔を近づけると、ほんのりと医療室のような空気を感じる。
飲泉できる施設では、口に含むと少しピリッとした薬味のような味がする。温泉なのに、どこか漢方のような感覚があるのが面白いところだ。
海の記憶を持つ温泉

含よう素泉の多くは、もともと海水だった地層から湧き出している。地下深くに閉じ込められた古代の海水が長い年月をかけて温められ、ミネラルを豊富に含んだ温泉として地上に現れる。
そのため含よう素泉は、ナトリウム-塩化物泉(特に強塩泉) と一緒に現れることが多い。海のミネラルをたっぷり抱えた温泉と言えるだろう。
関東地方では、千葉・東京・埼玉などの地下深い地層にこのタイプの温泉が多く、都市の真ん中でも意外と出会える泉質でもある。日本でおすすめの含よう素泉
戸田温泉(彩香の湯)

画像引用:戸田温泉 彩香の湯
- 魅力:幻想的な温泉の寝浴(浮遊浴)
- 泉質:含よう素-ナトリウム-塩化物温泉
- 浴槽:石(内湯)、岩(露天風呂)
- 泉温:39.8℃
- pH値:7.7
- 開業:2005年
- 利用:日帰り○、宿泊×
- 場所:埼玉県戸田市氷川町1丁目1−23
新宿から電車で30分。都心からすぐの場所に、希少な含よう素泉が湧いている。地下1500mから汲み上げた琥珀色の湯は、まるで古い洋酒のような深い色合い。寝浴(浮遊浴)に身を預けると、身体がゆっくりと浮き上がり、湯と空気の境界が曖昧になる。
小雨が降る日には湯けむりが空と混ざり合い、視界は白い霧の世界になる。溝口健二の映画『雨月物語』のワンシーンのような、静かな幻想が広がる温泉だ。
庭の湯(豊島園)

画像引用:庭の湯
- 魅力:都心の竜宮城、ハニートラップの湯
- 泉質:含よう素-ナトリウム-塩化物強塩温泉
- 浴槽:石(内湯)
- 泉温:34.8℃
- pH値:7.5
- 開業:2003年(平成15年)6月28日
- 利用:日帰り○、宿泊×
- 場所:東京都練馬区向山三丁目25-1
都庁前から大江戸線で18分。豊島園にある天然温泉。ヨウ素を多く含む茶褐色の湯は、入って数分で体が温まり、浴槽から出るとフラフラするほど強烈な湯あたりが来る。
まるでボクサーが強烈な右フックを食らい、ゴングに救われたような感覚。それでもまた入りたくなる。都心の真ん中で味わうこの中毒性はまさに竜宮城。帰りたくない、帰れない。浦島太郎になってしまう“ハニートラップの湯”だ。
大手町温泉(大手町)

- 魅力:大都会に湧く驚異の「強塩泉」
- 泉質:含よう素-ナトリウム-塩化物強塩温泉
- 浴槽:岩風呂(内湯)
- 泉温:36.5℃
- pH値:7.3
- 開業:2016年5月
- 利用:日帰り○、宿泊×
- 場所:東京都千代田区大手町1丁目9−2 グランキューブB1F
日本の経済の中心地・大手町の地下1500mから湧く天然温泉。泉質は含よう素を豊富に含む強塩泉で、東京でもトップクラスのミネラル量を誇る。浴槽はシンプルだが、ぬる湯・温泉・水風呂の三種類が揃い、都会の真ん中で温泉の基本を味わえる。
湯上がりは体が芯まで温まり、地下鉄の階段を上がるころにはすっかりリフレッシュ。帰りに近くのラーメン店「銀座 篝」で鶏白湯ラーメンを食べれば、完璧な都会の温泉ルートが完成する。
含よう素泉は、茶色い薬湯に浸かる、“体質改善のミステリアス温泉”

硫黄泉は卵の匂い、炭酸泉はシュワシュワ、重曹泉はつるすべ。その中に、ひときわ怪しげで、どこか医療室のような香りを漂わせる泉質がある。
含よう素泉(がんようそせん)。
湯の色は茶褐色から黒褐色。匂いはどこか消毒薬。そして入るとじわじわ身体が温まり、妙にスッキリする。

温泉界の中でも存在数が少なく、二酸化炭素泉・含鉄泉・放射能泉と並ぶ“稀少泉質”の仲間とされることもある。派手ではないが、通好み。静かな効き目で、じわりと人を虜にする温泉だ。
温泉分析書には「含よう素-ナトリウム-塩化物強塩温泉」といった長い名前で書かれることが多い。この“よう素”という成分、聞き覚えがある人も多いだろう。傷口に塗る茶色い消毒液、うがい薬、あの主役がヨウ素である。

ヨウ素は強い酸化力を持ち、細菌やウイルスを抑える働きがある。そのため含よう素泉は昔から、「体質改善の湯」と呼ばれてきた。
派手な刺激や香りはないが、入浴を続けることで代謝が整い、体の調子がじわじわと軽くなると言われている。いわば、温泉界の“薬湯担当”だ。
匂いも少し個性的。温泉に顔を近づけると、どこか医療室のような香りがする。「薬湯」という言葉がぴったり来る泉質だ。飲泉できる場所では、ほんのりピリッとした薬味のような味を感じることもある。温泉なのに、どこか漢方のような不思議な感覚。これも含よう素泉の魅力の一つだ。

派手な泡も、硫黄の強烈な香りもない。しかし入ると体がじんわり温まり、どこか身体の調子が整う。
海の記憶を宿したミネラルの湯。消毒薬のような香りの奥に、静かな力を秘めた泉質。
温泉分析書に「含よう素」の文字を見つけたら、それは少し珍しい温泉に出会った証拠だ。温泉通ほど、この湯を好きになる。そんな “静かな名湯” が、含よう素泉なのである。
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