
温泉は「十湯十色」と呼ばれるように、泉質は全部で10種類あり、泉質を知っておくと温泉の愉しみがバズりまくる。今回紹介するのは、その色から「赤湯」とも呼ばれる「含鉄泉」。色も匂いも、クセ強の泉質を紹介する。
含鉄泉の特徴と体感

含鉄泉とは?体を芯から温める“鉄の湯”
含鉄泉(がんてつせん)とは、温泉水1kg中に鉄イオンを20mg以上含む温泉のこと。
昔は「単純鉄泉」と呼ばれていた泉質で、体に良い湯として古くから親しまれてきた。
代表的な含鉄泉に、鉄輪温泉(大分県)、有馬温泉(兵庫県)、強羅温泉(神奈川県)がある。
湧き出した直後のお湯は、意外にも無色澄明。ところが空気に触れると、鉄分が酸化し、赤褐色(茶褐色)へと変化する。これがいわゆる“赤湯”“茶色い温泉”の正体だ。
鉄分が5mg以上含まれると湯が濁り始め、量が多いほど色は濃くなる。湯が生きて呼吸しているかのように、時間とともに表情を変えるのが含鉄泉の大きな魅力である。
一方で、湯の状態によっては無色や緑がかった色に見えることもある。これは鉄の状態や溶け方、ほかの成分との組み合わせによるものだ。
鉄の正体と色の秘密

含鉄泉の鉄分の主役は鉄(Ⅱ)イオン。この鉄(Ⅱ)は湧出時には色がほとんど出ないが、空気に触れて酸化すると鉄(Ⅲ)に変わり、赤褐色の沈殿を生む。この変化こそが、浴槽の縁や床が赤く染まる理由でもある。
つまり、含鉄泉は「湧いた瞬間は透明、時間が経つほど色づく温泉」。この“変化を楽しむ湯”という点でも、ほかの泉質にはない個性を持っている。
含鉄泉は「よく温まる温泉」として知られている。これは鉄分そのものの作用に加え塩化物泉や硫酸塩泉と組み合わさっていることが多く、保温効果が高いためだ。
湯に浸かると体の芯からじんわり温まり、湯冷めしにくい。このため、冷え性の人や、体力が落ちやすい人に向く泉質とされてきた。
「貧血の湯」と呼ばれる理由

含鉄泉は古くから「貧血の湯」とも呼ばれてきた。飲泉が可能な場合、鉄分を体内に取り込むことで、鉄欠乏性貧血や更年期障害の症状緩和が期待されてきたためだ。
もちろん現代医学では即効薬のような扱いはされないが、「体を温め、巡りを整える」という意味で、今もなお評価の高い泉質である。
強い湯ゆえの注意点

含鉄泉は“効き目がはっきりした湯”でもある。そのため、金属アレルギーを持つ人は、肌に反応が出る可能性がある。また、浴槽やタオルが鉄分で染まりやすいため、取り扱いにも注意が必要だ。刺激を感じた場合は無理をせず、短時間入浴を心がけたい。
「含鉄泉」と「単純鉄泉」の違い
鉄分が20mg以上含まれていても、温泉中の成分総量が1000mg未満の場合、泉質名は「単純鉄泉」や「単純冷鉱泉」となる。たとえば、天狗温泉 浅間山荘(天狗荘)は、成分総量が少ないため泉質は「単純温泉」だが、鉄分は含鉄泉の基準を満たしており、「単純鉄冷鉱泉」とされる特殊な存在だ。
含鉄泉とは、体に“血の気”を取り戻す湯。派手さはないが、じわじわと効いてくる温泉だ。湯の色が変わり、体が芯から温まり、気づけば少し元気になっている。
それは、体に鉄を打ち直すような感覚。含鉄泉は、体を内側から立て直すための、静かで力強い温泉なのである。
日本全国「含鉄泉」おすすめ名湯ガイド

天狗温泉(浅間山荘)

- 魅力:赤く染まる鉄球の湯
- 泉質:単純鉄冷鉱泉
- 浴槽:石(内湯のみ)
- 泉温:8.4℃
- pH値:5.9
- 開業:1995年
- 利用:日帰り○、宿泊○
- 場所:長野県小諸市甲 又4766−2
長野県の浅間山の麓にある「天狗温泉」の源泉が復活したのは1995年(平成7年)、比較的新しい温泉施設だ。化学成分の総量は1,000mg/kg未満のため「単純温泉」に分類されるが、鉄(Ⅱ)イオンおよび鉄(Ⅲ)イオンの総量が20mg/kg以上含まれており、含鉄泉の基準を満たす特殊な単純温泉である。

陶器を作れるほど鉄の含有量が多い赤褐色の湯は、赤ワインのピノ・ノワールのような雅趣がある。ホットワインに浸かっている心地、疲れがどんどん湯に溶けていく。温泉は人生を生まれ直す産湯だが、白紙に戻す必要はない。Paint it Red。過去も未来も赤く染めてしまえ。実際、着てきた白シャツが赤く染まった。鉄球の衝撃を受ける湯。

地元産そば粉100%の手打ち蕎麦は必食。3種類の薬味、甘さ控えめのタレ。冷たい蕎麦が温泉でぬくもった喉を気持ちよく抜けていく。名湯に負けないほどの美味しさ。
有馬療養温泉旅館(神奈川県川崎市)

川崎市鷺沼にある「有馬療養温泉旅館」は、首都圏で唯一の単純炭酸鉄泉を持つ施設。1968年に創業し、以来“霊光泉”と呼ばれ湯治目的の客を受け入れてきた。住宅街の中にある静かな秘湯として温泉ファンに知られている。

泉質は「単純鉄冷鉱泉」。湧出時は無色透明だが、空気に触れて酸化し茶褐色に変化する。鉄分を29mg含み、基準を超える“含鉄泉”として認定される。加温のみで源泉かけ流しを実現しており、クセが少なくやさしい肌触り。毎日でも入りたくなるような家庭的な湯である。
館内はレトロな趣で、休憩室も併設。娯楽性は少ないが、体と心を整える“療養の湯”としての魅力にあふれる。歴史的には修験者・役小角や源頼朝が浸かったとの伝承も残り、文化的価値も高い。

都市近郊で鉄泉を味わえる希少性と、静かに長湯できる落ち着き。有馬療養温泉旅館は、派手さのない“じんわり効く温泉”を求める人にふさわしい。
有馬療養温泉旅館の情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 有馬療養温泉旅館 |
| 住所 | 神奈川県川崎市宮前区有馬6-17-23 |
| 電話番号 | 044-977-5639 |
| アクセス | 東急田園都市線「鷺沼駅」から徒歩25分/バス5分 |
| 駐車場 | あり(無料) |
| 営業時間 | 10:00〜20:00 |
| 定休日 | 水曜 |
| 入館料金 | 大人1,300円 |
| 泉質 | 単純鉄冷鉱泉(単純炭酸鉄泉)/低張性・中性・冷鉱泉 |
| 泉温 | 13.0℃(加温あり) |
| pH値 | 6.8 |
| 特徴 | 首都圏唯一の炭酸鉄泉、加温かけ流し、茶褐色の赤湯、療養・静養向き |
含鉄泉とは、体に“血の気”を入れ直す温泉

温泉は十湯十色。その中でも、見た目からして一発で「ただ者じゃない」と分かるのが含鉄泉だ。湯は赤い。あるいは茶色い。ときにワインのように濃く、ときに錆びた鉄のように渋い。
初見では「これ、本当に入って大丈夫?」と一瞬ためらう。だが、その一歩を踏み出した人だけが、含鉄泉の本性を知る。
含鉄泉とは、温泉水1kg中に鉄イオンを20mg以上含む温泉のこと。昔は「単純鉄泉」と呼ばれ、体に良い湯として全国で重宝されてきた。鉄輪温泉、有馬温泉、強羅温泉など、名だたる名湯が名を連ねる。
おもしろいのは、湧いた瞬間の湯はほぼ透明なことだ。「赤湯」の正体は、最初から赤いわけではない。空気に触れた瞬間、鉄(Ⅱ)イオンが酸化し、鉄(Ⅲ)へと姿を変える。その結果、湯は赤褐色へと染まり、浴槽の縁や床には鉄の痕跡が刻まれていく。
含鉄泉は、時間とともに色づく“生きている温泉”なのだ。
鉄分が5mgを超えると、湯は目に見えて濁り始める。量が多いほど色は深くなり、湯はまるで赤ワインのような表情を帯びる。無色から赤へ、時には緑がかった色へ。その日の空気、温度、成分のバランスで、湯の顔は変わる。

入って分かる。含鉄泉はとにかく、よく温まる。じわじわではない。体の奥から、確実に熱が入ってくる。これは鉄そのものの作用というより、塩化物泉や硫酸塩泉と組み合わさることが多く、保温力が非常に高いためだ。湯から上がっても、熱が逃げない。外に出て「あれ、まだ温かい」と気づいたとき、含鉄泉の本領が発揮されている。
含鉄泉は昔から「貧血の湯」とも呼ばれてきた。飲泉できる場所では、鉄分を体に取り込むことで、貧血や更年期障害に良いとされてきた歴史がある。現代医学的に魔法の薬ではないが、「冷えた体を温め、巡りを整える」という点では、今も評価は高い。
ただし、含鉄泉は優しい顔だけをしていない。金属アレルギーのある人は、肌に反応が出ることもある。白いタオルや衣類は、容赦なく赤く染まる。これは欠点ではない。それだけ鉄が“本気”で入っている証拠だ。
含鉄泉とは何か。それは、肌をなでる温泉ではない。体に“鉄を打ち直す”温泉だ。
派手さはない。しかし、湯の色が変わり、体の芯が温まり、気づけば少し元気になっている。含鉄泉は、静かに、しかし確実に効いてくる。
血の気を取り戻したいとき。体を立て直したいとき。含鉄泉は、そんな人のために、今日も赤く湯気を立てている。
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