
温泉は「十湯十色」と呼ばれるように、泉質は全部で10種類あり、泉質を知っておくと温泉の愉しみがバズりまくる。今回紹介するのは、「温まりの湯(熱の湯)」と呼ばれる塩化物泉(えんかぶっせん)。
誰もが聞いたことのある超有名温泉に多い「塩化物泉」の秘密を知って、温泉ライフを楽しもう。
塩化物泉とは?「食塩泉」の正体と効能
別名「食塩泉」—主成分は“塩”でポカポカ

塩化物泉は、名前のとおり主成分は塩(食塩)。入るとじんわり体を温め、上がったあともぽかぽかが続くのが特徴。
環境省の定義では「温泉水1kg中の溶存物質が1,000mg以上で、陰イオンの主成分が塩化物イオン(Cl⁻)であるもの」とされている。
温泉の中に多く含まれているのは、海の塩と同じ成分。塩化物イオンは、ナトリウムイオン(Na⁺)と結びついて「塩化ナトリウム」になるため、“食塩泉”と呼ばれている。
この“塩”が、湯の効能を左右し、塩分が肌に付着して薄い「塩のヴェール(皮膜)」を作る。この皮膜が汗の蒸発を防ぎ、体温を閉じ込めるため、湯から上がったあとも温かさが長く続く。血行促進とともに肌の乾燥を防ぎ、生き生きとした肌をつくる。
海沿いにも内陸にも湧く「太古の海水」



しょっぱくて、少しベタつく

超しょっぱい強塩泉(強食塩泉)


底倉温泉・つたや旅館(箱根)

- 魅力:箱根の自然と伊豆青石の掛け算
- 泉質:ナトリウム-塩化物泉
- 浴槽:伊豆青石
- 泉温:56.4℃
- pH値:7.8
- 開業:1842年(天保13年)以前
- 利用:日帰り×、宿泊○
- 場所:神奈川県足柄下郡箱根町底倉240−1
箱根七湯のひとつ「底倉温泉」で500年以上も続く名湯。戦国時代に豊臣秀吉が小田原攻めのときに温泉を掘らせ、将兵たちの疲れと傷を癒した。床から湯船まで全面に伊豆青石(いずあおいし)を使用。石材の中でも柔らかな材質で保温性に優れ、肌触りがよく、濡れると青味を増してマリンブルーに輝く。箱根の自然と全身を癒しで包み込む。
松江しんじ湖温泉(島根)

- 魅力:宍道湖の湖岸深くから湧き出す熱
- 泉質:ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉
- 浴槽:石
- 泉温:70.8℃
- pH値:8.3
- 開業:1984年
- 利用:日帰り○、宿泊○
- 場所: 島根県松江市西茶町40−1
松江しんじ湖温泉は、宍道湖の北側湖畔に湧く天然温泉。開湯は昭和46年(1971年)と歴史は浅いが、地下1250mから湧き出す約77度の湯は、高温良質で湯冷めしにくい。触感は、つるつる、スベスベ。山の湯とも、海の湯とも違う、湖畔の湯。宍道湖から吹く朝の潮風が頬を撫で、背中を爽やかにしてくれる。湯上がりは、大山乳業の白バラ牛乳とコーヒー牛乳でひと息。
鶴巻温泉・弘法の里湯(神奈川)

画像引用:弘法の里湯
- 魅力:「永遠」につかりたいカルシウム
- 泉質:カルシウム・ナトリウムー塩化物泉
- 浴槽:石(内湯)
- 泉温:34.3℃
- pH値:8.5
- 開業:2001年10月
- 利用:日帰り○、宿泊×
- 場所:神奈川県秦野市鶴巻北3-1-2
世界一カルシウムを含む温泉。牛乳も顔負け。クライマーが登山帰りに集う鶴巻温泉。坂井泉水のような透明感のある湯。逢瀬を重ねるほど気持ちよさが増す。浮力もすごい。「揺れる湯、揺れる想い、体じゅう感じる」。ZARDの「永遠」の湯。ここまで体がポカポカする湯も珍しい。
横須賀温泉 湯楽の里(神奈川)

「横須賀温泉 湯楽の里」は、東京湾を一望できる日帰り温泉施設。馬堀海岸駅から徒歩圏にあり、2011年にオープンした比較的新しい施設である。館内は大型チェーンらしい快適性が整い、地元客から観光客まで幅広く利用されている。

最大の魅力は露天風呂からの眺望。晴れた日には富士山まで望め、海と空の大パノラマを堪能できる。泉質は「含よう素-ナトリウム-塩化物強塩泉」で、ナトリウムイオン量は1万mg超と強塩系。全身を芯から温め、湯冷めしにくい。さらによう素含有量も関東屈指で、希少性が高い。
浴槽は種類が豊富で、内湯・炭酸泉・寝湯・水風呂など充実。食事処や物販コーナーもあり、一日過ごせる施設力がある。接客も丁寧で、ファミリーやカップルにも安心して勧められる。
温泉単体の個性は控えめだが、“絶景露天×強塩泉×快適設備”という総合力で高い満足度を誇る。観光やドライブの合間に立ち寄りたい海辺の温泉である。
横須賀温泉 湯楽の里の情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 横須賀温泉 湯楽の里 |
| 住所 | 神奈川県横須賀市馬堀海岸4-1-23 |
| 電話番号 | 046-845-1726 |
| アクセス | 京急本線「馬堀海岸駅」から徒歩12分 |
| 駐車場 | あり(無料・200台規模) |
| 営業時間 | 9:00〜24:00(最終受付23:00) |
| 定休日 | 年中無休(メンテナンス休業あり) |
| 入館料金 | 大人平日1,150円/土日祝1,350円 |
| 泉質 | 含よう素-ナトリウム-塩化物強塩泉(高張性・中性・低温泉) |
| 泉温 | 29.5℃(加温あり) |
| pH値 | 7.24 |
| 特徴 | 東京湾を望む絶景露天、強塩泉で温まり持続、施設充実でファミリー利用に最適 |
東山温泉(福島)
- 魅力:天然岩風呂【千年の湯】の産湯力
- 泉質:ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉
- 浴槽:岩風呂(内湯)
- 泉温:41.9
- pH値:7.8
- 開業:1931年(昭和6年)
- 利用:日帰り×、宿泊○
- 場所:福島県会津若松市東山町湯本川向222
東山温泉は、奈良時代の行基が発見した歴史ある湯。岩盤から温泉が湧き、江戸時代には会津藩の湯治場として栄えた。戊辰戦争のときに土方歳三が刀傷を癒した猿の湯が有名。会津の名峰・磐梯山に登った際にお世話になった東山温泉『新滝』は、全部で4種類の源泉かけ流しの温泉があり、【千年の湯】の肌触り、快楽指数が群を抜いている。
赤湯温泉(山形)

画像引用:やまと屋
山形県南陽市に位置する赤湯温泉。開湯から900年以上の歴史を持つ名湯。しかし、ここも吹雪く蔵王の記憶や、宿で飲んだ日本酒「十四代」の印象が強すぎて記憶なし。今度はゆっくり温泉を堪能したい。もちろん「十四代」はもう一度、飲む。
湯河原温泉(神奈川)

『万葉集』にも登場する関東最古の湯が神奈川県の湯河原温泉。お隣が日本有数のリゾート・熱海ということもあってか、驚くほど静か。時間は流れているのに、歴史が止まったような静けさ。海に近い湯なのに、山奥にいるかのような感覚になる。いつかは奥湯河原の宿で一泊し、桜や新緑、紅葉の季節に、川の音を聞きながら湯と語らいたい。
あったからんど温泉(北海道・今金町)

今金町の田園地帯にあるホテルいまかね併設の温泉施設「あったからんど」。外観はオランダ風の風車建築、館内は地元の道南杉を使った温もりある造り。泉質はナトリウム‐塩化物強塩泉で、海水の約1.2倍という高い塩分濃度を誇る。体がぷかりと浮くほど密度が高く、湯あがりは驚くほどポカポカと温かさが続く。
塩分が皮膚を保護し、冷え性や切り傷、疲労回復に効果的。飲泉するとしょっぱく、まるで“開拓者の汗”のような味わいがある。源泉は、地元の人々を癒したいという思いから掘削され、1995年に完成。以来、地域の憩いの場として親しまれてきた。
湯の成分が濃く、温かい海に抱かれるような浮遊感がある。強塩泉ならではの保温力と、地元の人の思いが詰まった“感謝の湯”。
楽天地スパ 錦糸町(東京)

錦糸町駅前のビル9階にある男性専用の天然温泉スパ。1956年創業の老舗で、24時間営業。地下650メートルから湧くナトリウム塩化物冷鉱泉(黒湯)は肌あたりが柔らかく、湯上がりも体がぽかぽかと温まる“都会の名湯”だ。
名物は、薬草を蒸したよもぎスチームサウナと、江戸時代の湯女文化を受け継ぐ背中流しサービス。水風呂の冷たさは都内屈指で、そのあとに浸かる黒湯と炭酸泉の組み合わせが格別。
塩化物泉に関する よくある質問(FAQ)

Q. 塩化物泉のお湯は飲めますか?
A. 飲用許可がある施設のみ可能です。塩分が多いため、高血圧・腎臓病の方は絶対に飲まないでください。
Q. 自宅のお風呂や洗濯に使えますか?
A. 塩分による配管の腐食(サビ)リスクが非常に高いため、推奨されません。給湯器メーカーの注意書きを確認してください。洗濯にも適しません。
Q. しょっぱくない塩化物泉もありますか?
A. 濃度(低張性)が低ければ、塩味を感じにくい場合もあります。
塩化物泉とは?─太古の海があなたを抱きしめる

温泉は十湯十色。硫黄泉は強烈、炭酸泉はシュワシュワ、単純温泉は天使。では塩化物泉はというと……「温まりの湯」ではなく、もはや “熱を閉じ込める魔法陣”である。
読み方は「えんかぶっせん」。別名「食塩泉」。そう、あの“食卓の塩”と同じ成分が湯の主役なのだ。え、温泉に塩?そう。あなたは今から“太古の海”に浸かることになる。
塩化物泉の正体は「塩」─つまり海だ(大事)
環境省の定義はこうだ。温泉1kgに溶存成分1,000mg以上、陰イオンの主成分が塩化物イオン(Cl⁻)…などと聞くと難しいが、要するに“塩が多い温泉”である。
湯の中の塩化物イオンは、ナトリウムと結びつき、我らが食卓の友・塩化ナトリウム(=食塩) になる。湯につかるとこの塩が肌に付着し、薄い“塩のヴェール”を作る。
そのヴェールが汗の蒸発をふせぎ、熱を閉じ込め、あなたの体をポッカポカの永久機関にする。だから塩化物泉は「温まりの湯(熱の湯)」と呼ばれる。
湯上がりに「あれ?まだ温かいんだけど?」
あれが塩の仕事だ。地味で最強。まさに仕事人。
海沿いにもある。内陸にもある。
塩化物泉は「海が近いからしょっぱい」…だけではない。内陸の塩化物泉は、なんと数百万年前の海が地下に閉じ込められた“化石海水”の成れの果て。
つまり地球の記憶。太古の海の欠片。温泉はロマンだと誰かが言ったが、これはロマンが過積載である。
海沿いの塩化物泉は「海そのもの」。内陸の塩化物泉は「昔の海」。場所は違えど、どちらもルーツは海。塩化物泉=海の魂を浴びる行為 と覚えれば間違いない。
しょっぱい。ベタつく。だが、それがいい。
塩化物泉はしょっぱい。そして時に、肌に少しベタつきが残る。
「え……ベタつくの苦手…」という人は安心してほしい。あれはベタつきではなく、塩のヴェール があなたを外気から守っているだけだ。
温泉版バリアコートである。防御力+30。保湿力+50。湯冷め抵抗値∞。
湯上がりの“しっとり・もっちり感”は、この塩の仕事っぷりの結晶だ。
超しょっぱい「強塩泉」は別格

塩分濃度が 1kg中14,000mg以上 になると “強塩泉”。これはもう塩の暴走。体は超ポカポカ、湯あたりも早い。まさに諸刃の剣。
- 馬越温泉(新潟)
- 白子温泉(千葉)
- 森岳温泉(秋田)
初めて入るなら、決して長湯してはならない。体の芯が“ストーブ”になる。
塩化物泉は「冷え性救済のラスボス」
泉質の適性チャートを見ると、塩化物泉のキーワードは「保温」「熱の湯」
冷え性?肩こり?冬場の末端の絶望?
それ全部、塩化物泉にお任せあれ。温泉界の“カイロ”。いや、全身用の温熱パワードスーツ である。
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