
群馬は泉質の幅が日本屈指に広い。強酸性硫黄泉から鉄リッチな硫酸塩泉、アルカリ単純泉まで、県内だけで温泉の全ジャンルを体験できる。
関東の背骨にそびえる名峰と火山帯。その裾野に、濃密な泉質と圧倒的な湯量、そして多彩な温泉文化が息づく“日本の湯都・群馬”。
草津・万座・水上・伊香保…いずれも全国区の名だが、その中身は想像以上にディープ。温泉ソムリエのYAMATOが実際に訪れて鑑定した「群馬の温泉ランキング」を作成。これが日本、いや世界の温泉トップ・オブ・トップである。
群馬おすすめ温泉ランキング
1位:草津温泉 “湯だけで旅になる”横綱の地力

草津は“湯そのもの”が主役の温泉地だ。強酸性の鋭い浴感に、硫黄の香気と高い保湿力が重なり、湯に沈むたびに体の芯が入れ替わるような感覚を得る。
三大日帰り施設(大滝乃湯・御座之湯・西の河原露天風呂)がそれぞれ異なる泉質を持ち、半径数百メートルで“泉質巡礼”が完結する。
湯畑を中心に、宿泊・共同浴場・日帰り施設が絶妙な距離で共存し、旅人が“湯の町そのもの”を歩いて味わえる構造になっている。
三湯を巡る最適ルート
1.大滝乃湯
まずここで体のスイッチを入れる。名物「合わせ湯」は温度帯の異なる五つの浴槽を、ぬる湯から熱湯へ段階的に巡る設えになっている。
いきなり熱に挑むのではなく、かけ湯→ぬる湯→中温→高温→仕上げの熱湯と上げていくと、末梢から芯へ血が通い、内側から火が灯る感覚になる。段階浴のあとに露天→水風呂と挟むと、自律神経の切り替えが鮮明になり、視界の“輪郭”まで冴える。

館内は清潔で動線が分かりやすい。1983年開業の大箱ながら、浴室は湯の個性で一本勝負という硬派な作りだ。内湯は煮川源泉×万代鉱源泉のブレンドで、角の立つ酸味としっとり感が同居する。
メタけい酸236.6mgが効いて、上がり際に薄い皮膜感が残るのが心地よい。露天は煮川源泉かけ流し。鉄分17.3mgが温熱の“押し”を生み、短時間でも体温が一段上がる。仕上げに水風呂(三湯の中で水風呂があるのはここだけだ)に沈めば、全身が一気に覚醒する。
2.御座之湯

ここでは強酸性(pH1.7)の万代鉱源泉を主役として体感する。足を入れた瞬間に肌がやわらかいベールで包まれる。数値が示すとおり、メタけい酸528.3mgという高濃度がとろみのある抱擁感を生む。とがった酸味のキレと、しっとりした後肌が両立しているのが御座之湯の矜持だ。

館内は石之湯/木之湯が日替わりで入れ替わる。石は熱の“直球”が来る力強さ、木は香りと保温の“余韻”が心地よい。さらに万代鉱源泉×湯畑源泉という二源泉が並び、酸味のシャープと香りの穏やかさを交互に行き来できる。

おすすめは、まず万代鉱で皮膚感覚を“起こし”、短い休憩→湯畑源泉で温度と香りを整え、最後に万代鉱で締める三点リレーだ。湯面は無色に近いが、肌がぬるりと滑る。浴後は頬が持ち上がるような張りを感じるはずだ。建物は2013年再建で、湯畑の景観と調和する端正な和建築。クレジットカード対応、脱衣所や動線の使い勝手もよい。
3.西の河原露天風呂

ここは夕方から夜にかけて訪れたい。西の河原公園の最奥に広がる巨大な露天は、湯舟の場所によって温度が明確に違う。手前のぬるめで半身浴をしながら息を整え、中央〜奥の熱めへと移ると、同じ源泉でも別物のように作用が変わる。座れる段差・寝転べる岩が随所にあり、“湯の中で体勢を変える”だけで滞在の質が上がる。

源泉は万代鉱系で、pH1.6と草津でも屈指の強酸性。成分総計も3.32g級と濃い。湯口に近づくほど熱と酸味が強く、離れるほどやさしい。露天の中で温度リレーが完結するのがこの施設の最大の魅力だ。

日没前の“ビフォア・サンセット”に入り、空が群青へ落ちるタイミングで星前の一景を味わう。湯気が薄くなる瞬間に山の稜線がくっきり現れ、体の境界が少し曖昧になる。完全に夜へ入ったら星後の一景。湯気に光が反射して、湯面が“夜の鏡”になる。音が少なく、時間がゆっくり沈んでいく。金曜17:30以降は混浴タイムがあるので、気になる人は時間をずらせばよい。支払いはクレジット対応で身軽に入れるのも嬉しい。
宿泊:湯畑の宿 佳乃や — 「湯の町に住む」ように泊まる拠点

草津で“湯畑の生活圏”を体験したいなら、真っ先に選びたい宿が 湯畑の宿 佳乃や(よしのや) だ。
湯畑まで徒歩1分、夜も朝も湯けむりが届く立地。館内は木の温もりがあり、ミニマルながら丁寧な造りで、旅館と民宿の中間の居心地を持つ。

宿の魅力は“温泉街に溶け込む自由さ”。食事なしの素泊まりスタイルで、夜は自分の足で外湯や食事処を巡れる。
共同浴場・四天王 — 草津の魂を感じる湯

湯畑周辺には十数の共同浴場があるが、なかでも“草津四天王”と呼ばれる4つが別格だ。いずれも無料で地元民と観光客が共に使う。

観光地でありながら、湯が町の生活インフラとして息づいていることを肌で感じられる。
| 名称 | 源泉 | 特徴 |
|---|---|---|
| 白旗の湯 | 白旗源泉 |
湯畑隣接、最も草津らしい強酸性の湯。 やや熱めで“これぞ草津”という香気と刺激。 |
| 千代の湯 | 万代鉱源泉 |
小ぢんまりとした浴室。 地元率が高く、静けさが心地よい。 |
| 地蔵の湯 | 地蔵源泉 |
木造の趣があり、ぬるめで長湯向き。 湯もやや柔らかい印象。 |
| 煮川の湯 | 煮川源泉 |
強烈な酸味と硫黄臭。 熱いが湯力は圧倒的で、血行促進感がすごい。 |
泉質と効能

- 強酸性(pH1.6〜2.1):強い殺菌力、肌の引き締め効果
- 硫化水素型:温熱・発汗作用が高い
- メタけい酸:皮膜感と保湿を生む
草津の温泉街には、湯畑周辺を中心に多くの食べ歩きグルメがある。
ひもかわうどん

特におすすめは「ひもかわうどん」の冷。群馬県・桐生地方発祥の幅広のうどんで、麺幅は最大10cm近いものもがある。「ラザニア」や「布のように見える」そのビジュアルは、一度見たら忘れられないインパクト。最強のコシとツルツルとのど越し抜群。笹吟がおすすめ。
ソフトクリーム


草津温泉には、多くのソフトクリーム専門店やカフェがあり、温泉街を散策しながら食べるのにぴったりなスイーツ 。「温泉×ソフトクリーム」の組み合わせは、温泉で火照った体を冷やしながら楽しむ という絶妙な相性。
2位:万座温泉 — 標高1,800m、“星と湯”が交差する天空の湯

標高1,800m、空気は薄く乾いている。そこに硫黄を豊富に含む酸性泉が湧く。湯に身を沈めて外気を浴びるだけで、体温と冷気が交互に揺れる。夜は空が近く、湯気の向こうに満天の星が浮かぶ。ここでは湯と星が同じ高さにある。

画像引用:万座高原ホテル
石庭露天風呂(混浴・タオル利用可):4つの源泉が7つの湯船に注がれ、それぞれ温度が異なる。中央の竜泉の湯は黄味がかかった希少泉で、ここでしか味わえない柔らかさがある。
男女別内湯:より硫黄臭が濃く、酸性度も高い。体を芯まで温めて一気に代謝が上がる。
泉質の特徴

温熱・殺菌・美肌のバランスが高く、刺激があるのに湯冷めしにくい。まさに“強さと優しさ”が同居する泉質だ。

滞在の魅力は、多くの宿が清掃時間を除きほぼ24時間入浴できること。食事はビュッフェ形式でも地元食材が多く、コストパフォーマンスが高い。硫黄泉を浴びに行くだけでも価値がある。
総じて「整う」というより「体を組み直す」感覚に近い。湯上がりは水分補給をして、10分ほど静かに座るのが理想的だ。
3位:水上温泉 — 利根川源流、庭園と風に抱かれる“ぬる湯の楽園”

水上は「景色ごと入る温泉」だ。アルカリ性単純泉のやさしい肌ざわりに、谷川岳から吹く清風と庭園の緑が重なり、五感が静かに整う。熱い湯が苦手でも長湯ができ、心身の緊張がほどけていく。
火あかりの湯(露天)

一万坪の庭園「華松園」を望む開放的な露天。ぬる湯で外気との対比が心地よく、夏から秋にかけてが最盛期だ。
月あかりの湯(内湯)

寝湯・水風呂を備え、4本の自家源泉を使い分ける。熟成温泉と生温泉の対比が面白い。日帰り利用:正午から、タオル貸出あり。料金2,500円と高めだが、設備と景観を考えれば納得の内容だ。
泉質

アルカリ性単純温泉(pH8.6/成分総計290mg)。刺激が少なく、滑らかで透明。湯上がりはラウンジで30分ほど静かに休むと体が整う。
駅から徒歩圏の宿も多く、公共交通でも行きやすい。帰りは丸須製菓の温泉饅頭や、駅前の“飲むわらびもち”で糖分補給をすると旅が締まる。
4位:伊香保温泉 — 365段の石段と茶褐の“黄金の湯”に癒やされる

伊香保は「歩いて入る温泉」である。365段の石段を上り下りしながら、湯けむりと歴史の香に包まれる。湯は鉄分を多く含み、茶褐色の濁り湯が体を静かに包む。保温・殺菌・美肌の三拍子がそろい、“温める力”が際立つ。
石段の物語

天正4年(1576)、武田勝頼が負傷兵治療のために湯を引かせ、浴舎と宿を整備したのが始まりとされる。日本最初の温泉都市計画とも言われる。石段は当初315段だったが、平成22年に365段へ改修された。通年賑わう願いを込めた数字だ。
石段の湯(95段目)

蔵造りの共同浴場で、源泉をそのまま引いている。湯は茶褐色でやや金気を感じる。

鉄が多いほど湯の色が深まり、伊香保独特の黄金色になる。美肌成分のメタけい酸も基準値を超え、湯上がりはしっとり感が長く続く。
営業時間10:00〜20:00、火曜休。料金800円。
黄金の湯館

源泉かけ流しの大型日帰り施設。内湯にはぬる湯もあり、長湯に向く。館内には食事処・休憩室・卓球・漫画コーナーなどがそろい、湯上がり後のリラックスを邪魔しない。濃厚ソフトクリームが名物だ。営業時間10:00〜22:00(水曜休)

夏は外気浴に最も適した季節。火照った体を石段の風がやさしく冷やし、睡眠の質まで上がる。観光客の少ない平日を狙えば、貸切に近い静けさを味わえる。
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