湯遊白書〜そこに温泉があるから

ここは天国かい?いや、温泉だよ。日本、アジア、世界の温泉を巡ります。日本、アジア、世界の温泉を巡ります。2017年11月23日、温泉ソムリエ協会認定「温泉ソムリエ」の資格を取得。本ブログの情報は平成29年8月発行の『温泉ソムリエ テキスト』(著者・遠間和広)に基づいています。

温泉の「泉温」とは?熱い湯・ぬるい湯・冷水浴まで“湯の性格”を見極めろ

温泉の「泉温」とは?熱い湯・ぬるい湯・冷水浴まで“湯の性格”を見極めろ

温泉分析書を見ていると、泉質、pH値、成分総計など、いかにも理科室っぽい言葉が並んでいる。その中で、温泉好きがつい見落としがちな数字がある。

泉温。

読み方は「せんおん」。温泉が湧き出したとき、または採取されたときの温度のことだ。「なんだ、ただの温度か」と思った人。ちょっと待ってほしい。

泉温は、温泉界における体温計であり、性格診断であり、入浴作戦会議の司令塔である。熱い湯なのか、ぬるい湯なのか。そのまま入れるのか、加温しているのか。体をシャキッとさせる湯なのか、心をふにゃふにゃに溶かす湯なのか。泉温を知ると、その温泉のキャラが一気に見えてくる。

泉温は、温泉のキャラクター表である

温泉の「泉温」とは?熱い湯・ぬるい湯・冷水浴まで“湯の性格”を見極めろ

泉温とは、温泉が湧出または採取されたときの温度のこと。

日本の温泉法では、25℃以上、または規定成分を含むものが温泉とされる。泉温によって、冷鉱泉、低温泉、温泉、高温泉に分類される。

熱い源泉は成分が濃い傾向があり、シャキッと目覚めるような効果がある。一方で、ぬるめの湯は肌にやさしく、リラックスに向いている。

42℃以上は交感神経を刺激する「目覚めの湯」
40℃以下は副交感神経を刺激する「癒やしの湯」
冷水浴は、温浴のありがたみを爆上げする「試練の湯」

温泉に入る前に、泉温を見る。たったそれだけで、その日の入り方が変わる。温泉分析書で泉温を見つけたら、こう思ってほしい。

「なるほど、この湯はそういう性格か」

温泉は黙って湧いている。しかし、泉温はかなりしゃべっている。

温泉は何℃から温泉なのか?

温泉の「泉温」とは?熱い湯・ぬるい湯・冷水浴まで“湯の性格”を見極めろ

日本の「温泉法」では、温泉はざっくり言うと、源泉温度が25℃以上であること、または規定の成分が一定量以上含まれていること。このどちらかを満たすものと定義されている。

つまり、25℃以上あれば、成分が薄くても法律上は温泉。逆に25℃未満でも、決められた成分がしっかり入っていれば温泉になる。

ここが面白いところで、温泉は単なる「熱い水」ではない。温度で勝負するタイプもいれば、成分で勝負するタイプもいる。温泉界にも、体育会系と文化系がいるのである。

なぜ25℃以上が温泉なのか?

なぜ日本では「25℃以上」が温泉の基準なのか。これは、日本の平均気温より少し高めだからだと言われている。つまり、自然に湧いている水が周囲の気温より明らかに温かければ、「お、これはただの水ではないぞ」となるわけだ。

ちなみに、寒い地域が多いヨーロッパでは、温泉の定義は20℃以上。アメリカでは21.2℃以上とされる。国によって「温かい」の基準が違う。温泉の世界にも、国民性がある。日本人は25℃で「ぬるいな」と思い、ヨーロッパでは20℃で「これは温泉です」と言う。温度に対するハードルの違いが、なかなか味わい深い。

泉温による4つの分類

温泉は、源泉温度によって次の4種類に分けられる。

泉温 分類
25℃未満 冷鉱泉
25℃以上34℃未満 低温泉
35℃以上42℃未満 温泉
42℃以上 高温泉

「冷鉱泉」や「低温泉」は、名前の通りぬるめの湯だ。そのまま入るには少し気合いが必要なこともあり、多くの場合は加温される。

一方、42℃以上の高温泉は、源泉そのものがかなり熱い。湧いた瞬間から「俺に近づくなら覚悟しろ」という顔をしている。

泉温が高いほど、成分は濃い傾向がある

温泉の「泉温」とは?熱い湯・ぬるい湯・冷水浴まで“湯の性格”を見極めろ

温泉の泉温、つまり源泉温度は、成分の濃さとも関係している。一般的には、源泉温度が高いほど、成分の濃い温泉である傾向が強い。

これは、熱いお茶のほうが茶葉の成分がよく出るのと似ている。ぬるい水でお茶をいれても、なかなか濃くならない。しかし熱湯なら、一気に色も香りも出る。

温泉も同じで、地下深くで高温の水が岩石や地層と触れ合うことで、さまざまな成分を溶かし込みやすくなる。

だから熱い源泉は、成分のパンチが強いことが多い。いわば、濃いめの出汁。温泉界の豚骨スープである。

ただし、熱ければ熱いほど絶対に名湯、というわけではない。熱すぎる湯は体への負担も大きい。成分が濃い湯ほど刺激が強いこともある。

温泉は、ラーメンと同じだ。濃厚こってりが正義の日もあれば、あっさり塩が沁みる日もある。

源泉温度が低い湯は、肌にやさしいことが多い

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一方で、源泉温度が低い湯には、別の魅力がある。低温の源泉は、肌にやさしい湯になりやすい。刺激が穏やかで、ゆっくり浸かるには向いている。

ただし、源泉温度が低い場合、入浴に適した温度まで加温する必要がある。この加温や循環の過程で、温泉成分が失われやすくなることもある。

また、冷鉱泉や低温泉では、加温や循環管理のために、消毒用の塩素が使われることもある。もちろん衛生管理として必要な場合があるので、塩素そのものが悪者というわけではない。

ただ、源泉そのままの香りや成分感を楽しみたい人にとっては、少し気になるポイントになる。温泉分析書を見るときは、泉温だけでなく、「加温あり」「循環あり」「消毒あり」といった表示もあわせて確認したい。

泉温は入口。そこから温泉の裏側が見えてくる。

42℃以上の高温泉は、目覚まし時計

温泉の「泉温」とは?熱い湯・ぬるい湯・冷水浴まで“湯の性格”を見極めろ

湯の温度によって、体に起こる温熱効果は変わる。まず、42℃以上の熱い湯。いわゆる「高温泉」や「高温浴」の温度帯だ。

42℃以上の熱い湯は、血管を収縮させ、興奮の自律神経である交感神経を刺激する。その結果、目が覚めたような状態になる。

朝風呂で熱い湯に入ると、「よし、今日も人間としてやっていくか」という気分になることがある。あれは気のせいではない。熱い湯が体にスイッチを入れているのだ。

42℃以上の湯は、身体の外側からガツンと温める温熱効果がある。短時間でシャキッとしたいときには向いている。

ただし、心臓や血管への負担も大きい。熱い湯は、温泉界の激辛カレーみたいなものだ。うまいが、調子に乗ると返り討ちにあう。

35℃〜42℃の温泉は、心をほどく

温泉の「泉温」とは?熱い湯・ぬるい湯・冷水浴まで“湯の性格”を見極めろ

35℃以上42℃未満の温度帯は、一般的に「温泉」と分類される。このあたりの湯は、血管を拡張し、リラックスの自律神経である副交感神経を刺激する。気持ちを鎮め、落ち着いた気分にしてくれる。

42℃以上の熱い湯が「起きろ!」と背中を叩く湯なら、35℃〜42℃の湯は「まあ座れ」と肩を揉んでくれる湯である。少しぬるめの温泉には、身体の内側からじんわり温める温熱効果があると覚えておきたい。

熱い湯は外側からドン。
ぬるめの湯は内側からジワッ。

この違いは、入浴後の感覚にも出る。熱い湯は入った瞬間に強い。ぬるめの湯は、出たあとに「あれ、まだ体がポカポカしている」と感じることがある。

リラックスしたいなら40℃以下がベスト

温泉の「泉温」とは?熱い湯・ぬるい湯・冷水浴まで“湯の性格”を見極めろ

「とにかくリラックスしたい」
「疲れを抜きたい」
「脳内で開催されている反省会を終わらせたい」

そんなときは、40℃以下の湯がおすすめだ。特に37℃〜39℃くらいの微温浴は、体温より少し高く、精神や神経の興奮を抑える鎮静作用がある温度帯とされる。

副交感神経を刺激し、脈拍数を落とし、血圧を下げる方向に働く。つまり、体に「もう戦わなくていい」と伝える湯である。

仕事、家事、人間関係、スマホ通知。現代人は、だいたいいつも交感神経が立ち上がりっぱなしだ。そんなときに必要なのは、熱湯で気合いを入れることではない。ぬるめの湯で、いったん人間に戻ることである。

泉温別の効果と入浴時間の目安

リラックス効果は40度以下

湯の温度によって、効果も、浸かる時間も変わってくる。基本はシンプル。熱い湯は短く。ぬるい湯は長く。目安は以下の通り。

泉温 効果 目安の入浴時間

超高温浴(45~48℃)

体質改善・免疫機能の正常化 3分以内

高温浴(42~45℃)

交感神経を刺激、目覚め効果 5分程度

温浴(39~42℃)

発汗・皮膚洗浄・血行促進 10〜15分

微温浴(37~39℃)

副交感神経を刺激、リラックス 15〜20分

不感温浴(34~37℃)

体温に近く、ストレス解消 20分以上

冷温浴(25~34℃)

血圧調整・リフレッシュ効果 1〜3分

冷水浴(25℃以下)

皮膚の保湿・血流調整 30秒〜1分

一般家庭のお風呂は、体温より少し高い「温浴」にあたる。日本人が最も気持ちよく感じる湯の温度は、個人差はあるが、42℃前後ともいわれる。

42℃は「気持ちいい」と「ちょっと危ない」の境界線にいる。絶妙に攻めた温度だ。まさに温泉界のギリギリボーイである。

39℃、40℃、41℃、42℃で入浴時間は変える

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温泉では、1℃の違いが意外と大きい。入浴時間の目安は、ざっくり次のように覚えておくといい。

湯温 入浴時間の目安
39℃ 20分
40℃ 15分
41℃ 10分
42℃ 5分

39℃なら、ゆっくり長めに浸かれる。40℃なら、リラックスと温まりのバランスがいい。41℃になると、少し熱さを感じる。42℃は、短時間勝負。

湯の温度が上がるほど、体への負担も増える。「せっかく来たから長く入らないともったいない」は危険な発想だ。

温泉は食べ放題ではない。元を取ろうとして限界まで浸かるものではない。いい湯は、腹八分目ならぬ、湯八分目である。

高温浴の効果は「目覚め」

温泉の「泉温」とは?熱い湯・ぬるい湯・冷水浴まで“湯の性格”を見極めろ

42℃以上の高温浴は、交感神経を緊張させる温度帯だ。精神や神経をたかぶらせ、心臓の拍動を増やし、血圧を上昇させる。そのため、脳が活性化し、目覚めたような感覚が得られる。朝に短時間入るなら、熱めの湯は相性がいい。

「今日は会議がある」
「運転前にシャキッとしたい」
「昨日の自分を脱ぎ捨てたい」

そんなときには、高温浴が効く。ただし、夜寝る前に熱すぎる湯に入ると、目が冴えることがある。寝る前に交感神経を煽るのは、布団の中でロックフェスを開催するようなものだ。眠りたいなら、40℃以下のぬるめの湯がいい。

二日酔いに熱い湯は危険

温泉の「泉温」とは?熱い湯・ぬるい湯・冷水浴まで“湯の性格”を見極めろ

ここで、やりがちな失敗をひとつ。二日酔いの人が、酔い覚ましに熱い湯へ入ることがある。これはおすすめしない。

二日酔いの状態では、血中アルコール濃度が高く、体は脱水気味になりやすい。血液もドロドロに近い状態になっていることがある。

そこへ熱い湯で血圧や心拍に負荷をかけると、逆効果になる。「熱い湯で酒を抜く」は、昭和の根性論である。アルコールは湯船ではなく、時間と水分補給で抜くものだ。

二日酔いの日は、無理して温泉で勝負しない。まず水を飲む。そして休む。温泉は逃げない。

冷水浴は、温泉の天国指数を上げる

温泉に入るとき、ぜひ試してほしいのが冷水浴である。

真冬でも水風呂に浸かる。文字だけ見ると、なかなか正気ではない。しかし、温泉好きの中には、温浴と冷水浴を組み合わせる人が多い。

冷水浴には、代謝を良くする、血流を整える、リフレッシュするなどの効果が期待される。ただ、個人的に一番大きいと思うのは、精神的に鍛えられることだ。

冷たい水に入る直前、人は自分と向き合う。浴槽の前で、心の中の武士が静かに刀を抜く。「行くのか、行かないのか」

そして入る。冷たい。想像の3倍冷たい。しかし、そのあとに温かい湯へ戻った瞬間、世界が変わる。

温浴の天国指数が爆上がりする。武士道に「礼に始まり礼に終わる」があるなら、温泉にはこう言いたい。

冷に始まり、冷に終わる。

最初に冷水で体を目覚めさせ、温泉で温まり、最後にまた冷水で締める。もちろん無理は禁物だが、ハマる人はハマる。サウナ好きが水風呂に取り憑かれる理由が、少しわかるはずだ。

ただし、冷水浴は誰にでも無条件でおすすめできるものではない。心臓や血圧に不安がある人、体調が悪い人、飲酒後の人は避けたほうがいい。
冷たい水は、体に強い刺激を与える。

入る場合も、いきなり肩までドボンではなく、足先からゆっくり。時間も30秒〜1分程度で十分だ。冷水浴は修行ではあるが、罰ゲームではない。気合いで乗り切るものではなく、体の反応を見ながら楽しむものだ。

 

 

 

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