湯遊白書〜そこに温泉があるから

ここは天国かい?いや、温泉だよ。日本、アジア、世界の温泉を巡ります。日本、アジア、世界の温泉を巡ります。2017年11月23日、温泉ソムリエ協会認定「温泉ソムリエ」の資格を取得。本ブログの情報は平成29年8月発行の『温泉ソムリエ テキスト』(著者・遠間和広)に基づいています。

温泉は泉質で選べ!成分・効能ランキング〜十湯十色の泉質を完全マスター

温泉の文化史〜歴史、文化、天国
温泉は「十湯十色」と呼ばれるように、その特色は様々。泉質名を付けることが許された温泉を「療養泉」と呼ぶ。2万8000を超える日本の温泉の中で泉質は全部で10種類あり、泉質を知っておくと温泉の愉しみがバズりまくる。泉質を制する者は温泉を制す。

【一覧表】温泉の泉質・十湯十色

泉質 特徴 代表的な温泉
単純温泉 刺激が少なく優しい 下呂温泉、由布院温泉
塩化物泉 「温まりの湯」 有馬温泉、登別温泉
炭酸水素塩泉 「美肌の湯」 乳頭温泉、白浜温泉
硫酸塩泉 傷の治癒に良い 四万温泉、蔵王温泉
二酸化炭素泉 血行促進効果 十津川温泉
含鉄泉 鉄分を含み赤褐色の湯 鉄輪温泉
酸性泉 殺菌効果が高い 草津温泉
含よう素泉 体質改善の湯 白子温泉
硫黄泉 特有の匂いと美肌効果 別府温泉、万座温泉
放射能泉 万病に効くとされる 三朝温泉

泉質は十湯十色。これだけ全国に様々な泉質がドラゴンボールのように散りばめられている。全国を旅し、温泉のドラゴンボールを拾い集めてほしい。きっと願いが叶う。

そこに泉質があるから、我々は温泉に向かう。

泉質は大きく3分類

泉質は10種類あるが、大きく分類すると3つに分かれる。

  • 単純温泉:刺激が少なく身体に優しい
  • 塩類泉:食塩を多く含み保温効果がある
  • 特殊成分を含む療養泉:7種類のどれかの特殊成分を規定値以上含み癖が強い  

単純温泉→塩類泉→特殊成分になるほど、温泉の個性がハッキリ現れ、同時に刺激も強くなる。まずは、この3つから自分に合う泉質を分類すると良い。

ちなみに、どの泉質にも当てはまらない、泉質名がつかない温泉は、温泉分析書の泉質の欄に「判定」と書かれている。

温泉の泉質:単純温泉

下呂温泉

日本で最も数の多い泉質が「単純温泉」。全体の1/4を占める。「単純」という名前だけ聞くと物足りなく思えるが、決して効果が弱い泉質ではない。最も癒しをくれる泉質でもあり、下呂温泉、由布院温泉、道後温泉、伊香保温泉など名湯は単純温泉。また、単純温泉であっても「浅間山荘 天狗荘」のように、含鉄泉の規定量の鉄分を含む特殊な単純温泉も場合もある。

単純温泉は温泉の条件である「源泉25度以上」だけを満たし、源泉温泉に含まれる化学成分の総量が1kgあたり1000mg以下のもの。温泉に含まれる化学成分の量が少ない温泉で、刺激が少なく身体に優しい。「湯あたり」が最も少ない泉質。ただし、鉱泉1kg中に含まれるガス性以外の成分である溶存物質(ようぞんぶっしつ)は入浴剤より圧倒的に多い。入浴剤は150〜250mg程度。単純温泉でも、その倍の成分は含まれる。

アルカリ性単純温泉

高尾山温泉『極楽湯』の檜風呂

高尾山温泉『極楽湯』の檜風呂

正確にはpH値が8.5以上が「アルカリ性単純温泉」になり、pH値が7.5以上は「弱アルカリ性単純温泉」。古い角質の新陳代謝により、ツルツル肌にしてくれる。子どもからお年寄りまで安心して入れるので「家族の湯」と呼ばれる。

特殊成分を含む療養泉が1つだけ規定値に達している場合

  • 単純温泉(温度のみ)
  • 単純硫黄冷鉱泉(硫黄のみ)
  • 単純硫黄温泉(温度と硫黄飲み)

特殊成分を含む療養泉が2つ以上、規定値に達している場合

  • 酸性・含硫黄-単純冷鉱泉(酸性と硫黄のみ)
  • 酸性・含硫黄-単純温泉(酸性と硫黄と温度のみ)

単純温泉と言っても特殊成分を含む「単純温泉」もあり、名湯と呼ぶべき温泉が無数にある。紛らわしいので"単純"という呼称を変更したほうがいいと思っている。例えば天狗温泉 浅間山荘は、化学成分の総量が1000mg以下なので泉質は「単純温泉」だが、含鉄泉の規定量である鉄分(鉄イオン)が20mg以上含まれるので「単純鉄冷鉱泉」になる。

有名・代表的な単純温泉

下呂温泉(岐阜)、由布院温泉(大分)、道後温泉(愛媛)、伊香保温泉(群馬)

下呂温泉

天狗温泉 浅間山荘

箱根湯本温泉・和泉館

赤湯温泉「やまと屋」

豪円院湯(鳥取)

高尾山温泉『極楽湯』

御座石鉱泉

温泉の泉質:塩類泉

温泉の泉質:塩類泉

塩類泉は、塩素イオンをもつ塩類を多量に含む温泉。温泉に含まれる化学成分の量が1kgあたり1000mg以上のものを指す。

塩化物泉

画像引用:横須賀温泉湯楽の里

塩化物泉は、陰イオンの主成分が塩化物(塩素イオン)の泉質。温泉分析書には「ナトリウム-塩化物泉」「ナトリウム-塩化物強塩泉」などと表記される。海水の成分に似た塩分を含む温泉で、温泉成分のコーティング効果がある。塩と肌の成分が結びつき、皮膜形成による保温効果があり、よく温まることから「温まりの湯(熱の湯)」などと呼ばれる。血行促進とともに肌の乾燥を防ぎ、生き生きとした肌をつくる。色は無色のほか、青、茶色、茶褐色に変化する温泉がある。

「ナトリウム―塩化物強塩泉」は、温泉水1kg中に、陽イオンの主成分がナトリウムイオンで、ナトリウムイオンが5500mg/kg 以上、塩化物イオンが8500mg/kg 以上、すなわち塩分(ナトリウムイオン+塩化物イオン)が14000mg以上の湯を指す。

有名・代表的な温泉

有馬温泉(兵庫県)、城崎温泉(兵庫)、登別温泉(北海道)、熱海温泉(静岡)

あったかランド(北海道 今金町)

道の駅 大滝温泉「遊湯館」

東山温泉『新滝』

別府温泉「竹瓦温泉」

横須賀温泉「湯楽の湯」

松江しんじ湖温泉

炭酸水素塩泉

入之波温泉・山鳩湯(奈良)

入之波温泉・山鳩湯(奈良)

炭酸水素塩泉は、陰イオンの主成分が炭酸水素イオンの泉質。または、炭酸水素ナトリウム(重炭酸)が340mg/kg以上含まれる泉質を指す。温泉分析書には「カルシウム-炭酸水素塩泉」「ナトリウム-炭酸水素塩泉」などと表記。昔は「重曹泉」や「重炭酸土類泉」などと呼ばれた。今でも多い「重曹泉」は、角質を軟化させて肌をなめらかにする「美肌の湯」。

色は無色と薄茶色、黄褐色に変化する温泉がある。ナトリウム-炭酸水素塩泉(重曹泉)は皮膚の油汚れを洗浄するのでサッパリ感がある。東京の蒲田温泉は「ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物冷鉱泉」で、有機物が分解されてことで湯が変色し、漆黒の黒湯をウリにしている。

有名・代表的な温泉

乳頭温泉(秋田)、白骨温泉(長野)、白浜温泉(和歌山)、塩原温泉(栃木)

秩父川端温泉『梵の湯』

稲村ヶ崎温泉

クアフォーレ清武温泉

入之波温泉・山鳩湯

長谷寺温泉「湯元井谷屋」

蒲田温泉(東京)

硫酸塩泉

強羅温泉・太陽山荘

強羅温泉・太陽山荘

硫酸塩泉は、陰イオンの主成分が「硫酸イオン」の泉質。硫酸イオンは、殺菌効果や抗炎症作用があり、筋肉痛などの痛みや炎症を和らげる保温効果があり、傷にも効くことから「傷の湯」とも呼ばれる。皮膚の角質層を柔らかくする作用や、乾燥した皮膚に水分を補給する作用もある。

温泉分析書では「ナトリウム-硫酸塩泉(芒硝泉)」、「カルシウム-硫酸塩泉(石膏泉)」など と表記。強羅温泉・太陽山荘が「石膏泉」の泉質。色はほとんど無色澄明。ナトリウム-硫酸塩泉(芒硝泉)は皮膚に膜を作り「しっとり肌」にし、カルシウム-硫酸塩泉(石膏泉)はハリと弾力のある肌を作る。朝湯の癒しにはナンバーワンの泉質。

有名・代表的な温泉

四万温泉(群馬)、蔵王温泉(山形)、湯河原温泉(神奈川)、銀山温泉(山形)

河津温泉郷湯ヶ野温泉・福田家

強羅温泉・太陽山荘

伊豆松崎温泉 豊崎ホテル

松崎温泉「山光荘」

温泉の泉質:特殊成分を含む療養泉

溶存物質・遊離二酸化炭素・総鉄イオン・水素イオン・よう化物イオン・総硫黄・ラドンの7種類のいずれかの特殊成分を規定値以上含む温泉を「特殊成分を含む療養泉」と呼ぶ。

この中でも「二酸化炭素泉」「含鉄泉」「放射能泉」は"三大稀少泉質"に当たる珍しい泉質。特に成分が劣化しやすい、「二酸化炭素泉」や「放射能泉」は源泉と浴槽が近いほうがいい。源泉が浴槽に近いと鮮度が良くなる。源泉の真上に浴槽を造る「足元湧出」は鮮度が最高。逆に、酸性泉や硫黄泉は刺激が強いので、空気に触れさせて冷ましたり酸化させたりしたほうがいい場合もある。

二酸化炭素泉

吉野温泉元湯(奈良)

吉野温泉元湯(奈良)

文字どおり二酸化炭素(炭酸ガス)が溶け込んだ温泉。温泉分析書では「遊離二酸化炭素」が1000mg以上で二酸化炭素泉になる。ただし、700mg以上あれば二酸化炭素の個性を発揮していると言える。炭酸の味がして入浴すると身体に泡がつき、清涼感を感じる。肌に泡が付く湯が多く「泡の湯」「炭酸泉」とも呼ばれる。血管を拡張して血行がよくなり、血圧を下げる効果、動脈硬化に効能があることから「心臓の湯」と呼ばれる。温泉で薬理効果(医学的な効果)が認められている成分。色は無色澄明。利尿効果もあり、肌のむくみもとってくれる。入浴するときは泉温に注目。遊離二酸化炭素は40℃以上になると抜けてしまう。34〜37℃の温泉がベスト。

有名・代表的な温泉

十津川温泉(奈良)、吉野山温泉(奈良)、有馬温泉(兵庫)、別府温泉(大分)

吉野温泉元湯

含鉄泉

有馬温泉「亀の井ホテル」

有馬温泉「亀の井ホテル」

含鉄泉は鉄分(鉄イオン)が20mg以上含まれる泉質。湧出時は無色澄明だが、空気に触れると赤褐色に変色。無色や緑色に変化する湯もある。鉄の量が5mg以上あると褐色に濁る。色がつくのは鉄(Ⅱ)の影響で、鉄(Ⅱ)は色に出ない。鉄(Ⅱ)は酸化すると鉄(Ⅱ)になる。含鉄泉は、よく温まり、貧血症や更年期障害に良い。金属アレルギーのひとは反応がでる可能性もある強い温泉。鉄分(鉄イオン)が20mg以上あっても、成分の総量が1000mgに満たないと「単純鉄泉」や「単純鉄冷鉱泉」になる。浅間山荘の天狗荘が「単純鉄冷鉱泉」。含鉄泉は昔は「単純鉄泉」と呼んだ。

有名・代表的な温泉

鉄輪温泉(大分)、有馬温泉(兵庫)、強羅温泉(神奈川)

硫黄泉

明礬温泉「紺屋地獄」(別府)

明礬温泉「紺屋地獄」(別府)

腐った卵のような硫化水素臭がするのが特徴で、いかにも温泉らしい温泉としてファンも多い泉質。万病に卓効があるとされるが、刺激が強く、長湯はしないほうがよい。色は硫化水素型の多くが白濁や乳白色に変化し、単純硫黄泉はほとんどが無色澄明。硫黄は水の浸透力の10倍で刺激が強く、毛細血管の拡張作用があり、健康美人を作る。遊離硫化水素が2mg/kgから「硫黄泉」になり、焦げたような硫黄臭がし、白濁する要因となる。硫黄自体は乾燥すると黄色くなり、匂いはない。臭いがするのは「硫化水素ガス」。温泉分析書では硫化水素イオンや、遊離硫化水素を見る。

有名・代表的な温泉

万座温泉(群馬)、鳴子温泉(宮城)、雲仙温泉(長崎)、越後湯沢温泉(新潟)

万座温泉『万座高原ホテル』

秩父『武甲温泉』

別府、明礬温泉「紺屋地獄」

酸性泉

らいちょう温泉 雷鳥荘

らいちょう温泉 雷鳥荘

酸性泉は、殺菌効果が強い泉質。肌や目にしみる強い刺激のある温泉。pH値が低く酸性度が高い。殺菌力抜群で、慢性皮膚病などに卓効があるが、皮膚や粘膜の弱い人は湯ただれを起こす場合もあるので注意が必要。普通、温泉は浴後も洗い流さないのがいいとされるが、酸性泉の場合は洗い流してから上がるのが賢明。色は無色か白濁が多い。水素イオンが1mg/kgから「酸性泉」になる。0.7mgから酸味を感じる。

有名・代表的な温泉

草津温泉(群馬)、酸ヶ湯温泉(青森)、別府温泉の泥湯(大分)

日本一、いや世界一の湯「草津温泉」

らいちょう温泉 雷鳥荘

酸ヶ湯温泉

別府、明礬温泉「紺屋地獄」

放射能泉

増富ラジウム温泉「不楼閣」

増富ラジウム温泉「不楼閣」

放射能泉は微量の放射能を含む泉質のこと。源泉の中にラドンやトロンを一定量以上含む泉質を指す。もう少し正確に定義すると、温泉水1kg中にラドンを3ナノキュリー( = 8.25マッヘ単位 = 111Bq)以上ある泉質が「放射能泉」。山梨の不楼閣のラドンの含有量は2390Bqなので、規定量の約20倍の素晴らしさ。

放射能泉は「ラジウム温泉」とも呼ばれる。ラドンは体内に取り込まれても数時間で呼気によって排出され、微量な放射線による刺激で免疫力を高める。体に良いものだけ残して消えていくので、飲泉としても利用される。「ラジウム泉」「ラドン泉」などとも呼ばれる。痛風など万病に卓効があるといわれる温泉。色は無色澄明が多いが、増富ラジウム温泉「不楼閣」は黄褐色。

有名・代表的な温泉

三朝温泉(鳥取)、玉川温泉(秋田)、赤目温泉(三重)、赤穂温泉(兵庫)

含よう素泉

豊島園 庭の湯(東京)

豊島園 庭の湯(東京)

含よう素泉は、温泉水1kg中に、ヨウ化物イオン(I -)を10mg以上含有する泉質。関東に多く、埼玉にある「戸田温泉 彩香の湯」はヨウ化物イオンが10.5mgなのでギリギリ「含よう素泉」の条件を満たしている。池袋の豊島園にある「庭の湯」は20.2mgなので倍以上ある。

温泉分析書には「含よう素-ナトリウム-塩化物強塩温泉」などと記載される。ヨウ素は傷薬、うがい薬に入っている成分。強い酸化力で殺菌効果を発揮する。全身の代謝を促進させ、コレステロールを低下させるため、含よう素泉は「体質改善の湯」と呼ばれる。ヨウ素を含むため黒褐色を帯びて湧出し、色は茶褐色か、ほとんど黒が多い。匂いは化学薬品のようで、飲泉するとピリッとした薬味がする。東京の豊島園 庭の湯、大手町温泉、千葉の白子温泉や新潟や秋田に多い。海水が温泉源となっている場合が多く、「ナトリウム-塩化物泉」(特に強塩泉)と結びついている場合が多い。

有名・代表的な温泉

白子温泉(千葉)、大手町温泉(東京)、戸田温泉(埼玉)

豊島園 庭の湯

戸田温泉 彩香の湯

大手町温泉 SPA大手町

泉質を深く知る

やさしい泉質

温泉の魅力〜泉質を制する者は温泉を制す

一般的に「やさしい泉質」は、「単純温泉」の泉質を指す。厳密に言えば、鉱泉1kg中に含まれるガス性以外の成分である溶存物質(ようぞんぶっしつ)が1000mg未満のもの。逆に酸ヶ湯温泉の「四分六分の湯」などは成分の量(溶存物質の総量)が6710mgで、かなり刺激が強い。

刺激の強い泉質

刺激が強い温泉

肌への刺激が強い温泉の代表は草津温泉の青森の酸ヶ湯温泉の泉質である「酸性泉」。好きな人にはたまらないが、苦手な人も多い。刺激が強いのでボディソープなどを使うと、肌の角質(外部の刺激から守り、水分の蒸発を防ぐ)がボロボロと取れてしまう。刺激の強い温泉は石鹸を使って身体を洗わないほうがいい。

湯あたりしやすい泉質

湯あたりしやすい泉質は「酸性泉」「硫黄泉(硫化水素型)」「放射能泉」の3つ。逆に「単純温泉」「二酸化炭素泉」は湯あたりしにくい。ちなみに「ビタミンC」を摂ると湯あたりの防止になる。

集中型と分散型とマルチ型の泉質

分類 特徴 表記例
集中型

泉質名が短い

1つの効能に特化

ナトリウム-塩化物泉
分散型

泉質名が長い

成分があり効果が分散

ナトリウム・マグネシウム・カルシウム-炭酸水素塩・塩化物泉

マルチ型

泉質に特殊効果が記載

泉質と特殊効果の両方がある

酸性・含硫黄・二酸化炭素・放射能・よう素-塩化物泉

「この温泉は含鉄泉だね」と一口に言っても、泉質の強さは3つに分類される。

「集中型」は泉質名が短く、1つの効能に特化したもの。

「分散型」は泉質名が長く、炭酸水素塩泉と塩化物泉など効果が分散されたもの。

「マルチ型」は泉質名が長く、色々な効能が複数あるもの。

泉質は前に書いてあるほど成分が濃い。または、その温泉のオリジナリティが高い。今はグランピング施設に変わってしまった木曽温泉ホテルが分散型の名湯だった。泉質は「ナトリウム・マグネシウム・カルシウムー炭酸水素塩・塩化物温泉」と色んな成分が混ざっている。

昔の泉質名

  • 食塩泉(旧)→塩化物泉
  • 石膏泉(旧)→硫酸塩泉(カルシウムー硫酸塩泉)
  • 芒硝泉(旧)→硫酸塩泉(ナトリウムー硫酸塩泉)
  • 正苦味泉(旧)→硫酸塩泉(マグネシウムー硫酸塩泉)
  • 明礬泉(旧)→硫酸塩泉(アルミニウムー硫酸塩泉) 
  • 緑礬泉(旧)→硫酸塩泉(鉄ー硫酸塩泉) 
  • 重炭酸土類泉(旧)→炭酸水素塩泉(カルシウム・マグネシウムー炭酸水素塩泉)
  • 重曹泉(旧)→炭酸水素塩泉(ナトリウムー炭酸水素塩泉)
  • 炭酸鉄泉(旧)→炭酸水素塩泉(鉄ー炭酸水素塩泉)
  • 単純炭酸泉(旧)→二酸化炭素泉(単純 二酸化炭素泉)
  • 硫化水素泉(旧)→硫黄泉(硫化水素型)
  • 炭酸鉄泉(旧)→含鉄泉

温泉施設によっては昔の泉質名が記載されているところもある。

泉質別の効能(適応症)

泉質 入浴 飲泉
単純温泉 自律神経不安定症、不眠症、うつ状態
塩化物泉

切り傷、冷え性、うつ状態など

萎縮性胃炎、便秘
炭酸水素塩泉 切り傷、冷え性皮膚乾燥症など

胃十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、

耐糖尿病、痛風など

硫酸塩泉 切り傷、冷え性、うつ状態など
(塩化物泉と同じ)

高コレステロール血症、便秘など

二酸化炭素泉

切り傷、冷え性、自律神経不安定症など

胃腸機能低下
含鉄泉 鉄欠乏性貧血
酸性泉

アトピー性皮膚炎など

含よう素泉 高コレステロール血症
硫黄泉

アトピー性皮膚炎など

糖尿病、高コレステロール血症

放射能泉

痛風、関節リウマチなど

温泉というと「効能(成分に含まれる薬理効果)」を気にする方が多いが、結論から言えば、温泉の効果は「治療」ではなく、体や心を休めることによる健康促進であり「療養」もしくは「予防」。効能といっても医学・科学的に証明されているのは、炭酸ガスによる血管拡張作用くらい。身体の治療ではなく、精神の癒しを求めていくのがおすすめ。

美人の湯・美肌の湯

温泉の泉質の成分・効能ランキング〜泉質を制する者は温泉を制す

ちなみに温泉には「美人の湯・美肌の湯」と呼ばれるものが多いが、肌の表面を溶かす乳化作用によって、ツルツル・美白になること。三大美人泉質と呼ばれるのが「炭酸水素塩泉(油性の汚れを落とすクレンジング効果)」「硫酸塩泉(皮膚に皮膜をつくる肌の蘇生効果)」「硫黄泉(シミ予防効果)の3つ。ちなみにクレンジング効果が高い温泉ほど、入浴中は潤っても、入浴後は乾燥しやすいので、きちんと保湿するのがおすすめ。

温泉分析書の成分【重要】

温泉の成分

温泉分析書

温泉は源泉の温度が25℃以上あるか、もしくは上の19の物質のどれか1つが規定量含まれていれば「温泉」として認められる(昭和23年制定、温泉法第二条)

【物質名 →含有量(1kg中)】
・溶存物質(ガス性のものを除く)→総量1000mg以上
・遊離二酸化炭素(遊離炭酸)→250mg以上
・リチウムイオン→1mg以上
・ストロンチウムイオン→ 10mg以上
・バリウムイオン→5mg以上
・総鉄イオン→ 10mg以上
・マンガン(Ⅱ)イオン(第一マンガンイオン)→10mg以上
・水素イオン→1mg以上
・臭化物イオン→ 5mg以上
・よう化物イオン→1mg以上
・ふっ化物イオン→2mg以上
・ひ酸水素イオン(ヒドロひ酸イオン)→ 1.3mg以上
・メタ亜ひ酸→ 1mg以上
・総硫黄→1mg以上
・メタほう酸→ 5mg以上
・メタけい酸→50mg以上
・炭酸水素ナトリウム(重炭酸ソーダ)→340mg以上
・ラドン→20(100億分の1キュリー単位)以上
・ラジウム塩→1億分の1mg以上

リチウムイオン

「リチウムイオン電池」など電池に使われる。要は電荷に関係する成分。「抗うつ作用」があると考えられ、たくさん含まれるほど元気になる。1mg以上あると「温泉」になるが、泉質を分類するのに関係はない。

ナトリウム+塩素イオン(塩化物イオン)

ナトリウムは、ミネラルの一種。塩素イオン(塩化物イオン)は塩の一種。

ナトリウム+塩素イオン(塩化物イオン)が240ミリバル/kg以上は「強塩泉」になり、塩味がして体が温まりやすい。

ナトリウム+炭酸水素イオン

ナトリウム(イオン)と炭酸水素イオンの重量が80%を超えると、つるつる度が高い。

硝酸イオン

無臭で、派手な特徴はないが、体の内側と外側にやさしく働きかけてくれる“静かな名脇役。殺菌効果や抗炎症作用があり、切り傷や関節炎、筋肉痛などの痛みや炎症を和らげる。

炭酸イオン

炭酸イオンが20mg/kg以上あるとツルツル感がわかり、30mg以上でツルツル感が強くなる。梵の湯は90mg以上で、奥熊野温泉は280mg以上という驚異。

炭酸水素イオン

泉質名に限らず、炭酸水素イオンが1,000mg以上あれば、美肌効果が実感できる。

カルシウムイオン

新しい角質層の形成を促し、神経の鎮静化、手足の痙攣の緩和の効果がある。つるつる度にも貢献する。神奈川県の鶴巻温泉の「弘法の里湯」は、世界一カルシウムイオンが含まれる温泉。

マグネシウム

ミネラルの種類で含有量が多いと「正苦味泉」になり、飲泉したときの苦味が強い。身体への浸透がよく、疲労回復などの効果がある。

アルミニウム

殺菌消毒作用があり、肌の表面を保護し、ハリを回復させる効果、皮膚病にも効く。

鉄(Fe2)

含鉄泉でなくとも、5mg/kgの鉄分があれば褐色になる。多いほど、黄緑→黄色→茶褐色になる。20mg/kg以上で含鉄泉になる。含鉄泉までいかなくとも、「鉄」の含有量が多いと湯冷めしにくく、体が温まる。温熱効果が高い。

水素イオン

1mg/kgから酸性泉になる。0.7mg/kgから酸味がする。

硫化水素イオン    

硫化水素イオンが多いと緑色になり、塩化ナトリウムとの組み合わせでエメラルドグリーンになる。

メタけい酸

保湿成分。100mg以上で「美人の湯」と呼ばれ、500mg/kg以上 あると温泉が青くなる。

メタほう酸

目に酸性やアルカリ性の異物が入ったときに中和作用があり、痛みを緩和してくれる。基準値は5mg。

遊離硫化水素

2mg/kgから「硫黄泉」になる。焦げたような硫黄臭がし、白濁する要因となる。

遊離二酸化炭素(遊離炭酸)

1000mg以上で二酸化炭素泉になる。ただし、700mg以上あれば二酸化炭素の個性を発揮していると言える。

温泉を愉しむ知識

温泉の魅力〜泉質を制する者は温泉を制す

知っとくと、より温泉を愉しめるのが下の5つ。

  1. 泉温
  2. 水素イオン濃度(pH値)
  3. 浸透圧
  4. 湧出量
  5. 温泉の色

脱衣所には「温泉分析書」があり、そこに書かれているので見てみよう。

泉温

温泉の泉質の成分・効能ランキング〜泉質を制する者は温泉を制す

  • 25℃未満:「冷鉱泉」
  • 25℃以上34℃未満:「低温泉」
  • 35℃以上42未満:「温泉」
  • 42℃以上:「高温泉」

温泉の泉温(源泉温度)は熱いほど成分の濃い温泉である傾向が強い。熱いお茶のほうが濃い味がするのと同じ。源泉温度が低いほど肌にやさしい湯になりやすいが、加温しないといけないので成分は失われやすい。

源泉温度が25℃未満を「冷鉱泉」。加温や循環のため、消毒の塩素を入れることがある。25℃以上34℃未満を「低温泉」、35℃以上42未満を「温泉」、42℃以上を「高温泉」の4種類に分類される。「冷鉱泉」や「低温泉」は、ぬるめの湯。

ちなみに温泉の定義が「源泉温度25℃以上」なのは、日本の平均気温より少し高めにだから。日本より寒いヨーロッパの温泉の定義は「20℃以上」、アメリカの温泉は「21.2℃以上」になる。

温泉に入るときに、おすすめしたいのは真冬でも水風呂につかる「冷水浴」。代謝を良くするなどの効果より精神的に鍛えられる。何より、そのあとの温浴の天国指数を爆上げする。武士道で「礼に始まり礼に終わる」というように、温泉でも「冷に始まり冷に終わる」を試してもらいたい。泉温ごとの効能、入浴時間などは下記を参考にされたし。

水素イオン濃度(pH値)

水素イオン濃度(pH値)

温泉分析書

温泉ビューティーになれるか気になる人がチェックするpH値(水素イオン濃度)。ペーハー値とは液性(酸性、中性、アルカリ性)を示すもので、「温泉が酸性かアルカリ性かを示す数値」のこと。人の肌のpH値は5〜6ほどの弱酸性に当たる。

  • 酸 性:pH値3未満
  • 弱酸性:pH値3以上~6未満
  • 中 性:pH値6以上~7.5未満
  • 弱アルカリ性:pH値7.5以上~8.5未満
  • アルカリ性:pH値8.5以上

どちらともいえない中性(pH6~7.5)をはさんで弱アルカリ性泉(pH7.5~8.5未満)、アルカリ性泉(pH8.5以上)、弱酸性泉(pH3~6未満)、酸性泉(pH3未満)に分類される。

アルカリ性温泉

ナトリウムやマグネシウム、カルシウムなどを含んでいるとアルカリ性の温泉になり、アルカリ性のpH値は石鹸とほぼ同じ。つまり、アルカリ性の温泉に浴することで油分を落として角質層を柔らかくし、お肌をつるつるにする働きがある。強アルカリ性温泉までなると、古い角質層の新陳代謝を促進するが、強力な石鹸と同じなので、皮脂の油分が溶かされすぎて肌がカサカサになることもある。pH値が10を超えると、ツルツルを超えてキュッキュッ。

酸性の温泉

酸性泉とは水素イオン(H+)を放出する物質が溶け込んでいる温泉のこと。殺菌力や抗菌力が高く、皮膚病などに効果がある。昔から「湯治」に行くとは、酸性泉に行くことを指す場合が多い。刺激が強いので肌がピリピリする。

ここまで説明してきたpH値だが、肌がツルルツするかどうかはpH値よりも、炭酸イオンや炭酸水素イオンの含有量で決まる場合が多い。

浸透圧

温泉分析書

温泉分析書の「カルシウム・ナトリウムー硫酸塩温泉(弱アルカリ性・低張性・高温泉)のように、カッコ内にあるものが浸透圧。

  • 低張性:薄くてやさしい。肌に水分が浸透しやすい
  • 等張性:中間
  • 高張性:濃く刺激が強く、肌に成分が浸透しやすい

高張性泉は成分が濃く、成分が身体に浸透しやすい温泉で酸性泉・硫黄泉などが当たる。湯あたりが起きやすく、低張性泉は成分が薄い単純温泉・放射能泉などに多く、水分が浸透しやすいので、肌がふやけやすい。

湧出量

日本一の湯量〜入之波温泉・山鳩湯【大和最古の温泉】

1分間あたりに温泉が湧き出すリットルを「湧出量」という。100リットル/分なら、源泉かけ流しで1日100名の湯客が衛生的に入浴でき、収容人数に対して湧出量が多いと衛生的。我が故郷にある入之波温泉・山鳩湯は毎分500リットルの湧出量で日本一を誇る。目安として毎分20リットル以上の湧出量があれば、鮮度の良い温泉になる。

温泉の色(にごり湯)

温泉の魅力〜泉質を制する者は温泉を制す

本来の温泉は無色透明。ほとんどの場合、酸化することで色がつき、乳白色、茶褐色、エメラルドグリーン、黒色などの「濁り湯」になる。泉質を反映した色もあるが、酸化されることは肌への刺激が弱まり、やさしい湯になることを意味する。

エメラルドグリーン

丘の上ヒュッテ

丘の上ヒュッテ

「硫黄泉」、特に硫化水素イオンが主成分の「硫黄型」に多い。塩化ナトリウムの影響で色づく場合もある。

乳白色

乳白色の温泉

ガス性の硫黄が主成分の「硫黄泉」に多い。勝手に「レオナール・フジタの温泉」と呼んでいる。

茶褐色(赤)

天狗温泉 浅間山荘

天狗温泉 浅間山荘

鉄が錆びた色。鉄を塩水につけると錆びて変色するのと同じ。「含鉄泉」の特徴だが、規定値に満たない塩化物泉でも鉄分が塩で錆びて変色する場合がある。鉄分が少ないと「緑」、多くなるにつれ「黄」、「赤や茶褐色」になる。

コバルトブルー

道の駅 大滝温泉「遊湯館」

道の駅 大滝温泉「遊湯館」

メタけい酸(ケイ素)が多いと青くなりやすい。メタけい酸は美肌成分がある美人の湯。

黒(コーヒー色)

蒲田温泉

蒲田温泉

泥湯でない場合は、有機物の分解が原因になることが多い。「炭酸水素塩泉」が多く、海に近いと「塩化物泉」もある。東京の蒲田温泉など、両方の特徴がある「ナトリウム炭酸水素塩・塩化物冷鉱泉」の泉質。海藻や植物が堆積し、長い年月をかけて分解されてできた「フミン酸」という有機物が溶け出すことでPaint it Black。

モール泉

温泉で見かける「モール泉」とは、太古の植物や有機物の成分が入った温泉。コーヒー色になることが多い。

要注意の「高濃度炭酸泉」

要注意の「高濃度炭酸泉」

温泉好きにとって厄介なのが「炭酸泉」。よく「高濃度炭酸泉」と謳っているのに、まったく気泡がつかないショボい温泉に入ったことがある人は多い。

「高濃度炭酸泉」とは、温泉分析書に記載されている遊離二酸化炭素(遊離炭酸)が1,000mg/kg以上あるものを指す。スーパー銭湯などにある人工炭酸泉は、水道水に炭酸ガスを溶かしてつくられている。ここで注意してほしいが、源泉温度、pH値、浴槽の広さという3つの要素。

まず温度について。炭酸ガスは温度が高いと揮発しやすくなる性質があり、30〜37℃のぬるめの湯が炭酸が湯にとどまりやすい。逆に40℃を超えると炭酸はどんどん抜けていくため、高温の湯には注意が必要だ。

次にpH値。炭酸は弱酸性から中性の環境で安定しやすく、pHが7.5以上になるとアルカリ性となり炭酸が逃げやすくなる。温泉分析書で「中性」「弱酸性」になっているか見よう。

最後に重要なのが、浴槽の大きさ。広すぎる浴槽では炭酸が均等に回らず、十分な濃度になりにくい。

泡が少ない原因の可能性

  • 加温されすぎている(高温でCO₂が揮発)
  • pH値が高くアルカリ性で炭酸が逃げている
  • 人工的に炭酸を加えているが、循環や消泡処理で弱くなっている
  • 浴槽が大きすぎて、炭酸が均等に回っていない

炭酸泉を謳っている温泉のチェックリスト

  • 遊離二酸化炭素(遊離炭酸):1,000mg/kg 以上あるか?
  • 源泉温度:ぬるめか(30〜37℃)
  • pH値:弱酸性や中性になっているか

以上をチェックして、本物の炭酸泉に出逢ってほしい。

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