
温泉分析書にひっそり書かれた「pH値」。一見ただの数字だが、実はその湯がピリッと攻める湯なのか、やさしく包む湯なのか、肌をツルツルにする湯なのかを見抜く重要サインである。
しかも、温泉好きがよく言う「美肌の湯」は、pH値だけでは決まらない。本当に見るべきなのは、pH値の裏で暗躍する“ツルツル成分”たち。
温泉ソムリエの筆者YAMATOが、温泉のpH値の見方と、美肌湯を見抜くコツをわかりやすく解説する。読み終わるころには、脱衣所の温泉分析書がただの紙ではなく、お湯の正体を暴く攻略本に見えてくるはずだ。
- 温泉のpH値とは?
- 温泉分析書ではどこを見る?pH値はここにいる
- pH値を身近なもので例えると?
- pH値が高いほどツルツル?実はそれだけでは決まらない
- 炭酸泉を探すならpH値もチェックせよ
- よくある質問:温泉のpH値Q&A
温泉のpH値とは?

pHの直訳は、「水素イオン濃度指数」。英語では "potential of hydrogen" と書く。
読み方は「ピーエイチ」でも「ペーハー」でもいい。昭和の温泉おじさんはペーハー派、理科の先生はピーエイチ派、どちらでも湯船は怒らない。
このpH値、ざっくり言えば温泉が酸性なのか、中性なのか、アルカリ性なのかを示す数字だ。温泉分析書では「pH値」「水素イオン濃度」などと書かれている。日本温泉協会も、pH値は温泉水の液性を示し、肌触りにも関係する注目ポイントだと説明している。
つまりpH値は、温泉の肌ざわりメーターである。
酸性なら、ピリッと攻めるリセット系。
中性なら、刺激少なめのみんなの実家系。
アルカリ性なら、角質をゆるめる美肌レンジャー系。
温泉に入った瞬間、「おっ、なんかツルツルする!」と思うことがある。あの感動の裏側に、pH値が潜んでいるのだ。
温泉分析書ではどこを見る?pH値はここにいる

温泉分析書
温泉ビューティーになれるか気になる人がチェックするpH値(水素イオン濃度)。ペーハー値とは液性(酸性、中性、アルカリ性)を示すもので、「温泉が酸性かアルカリ性かを示す数値」のこと。人の肌のpH値は5〜6ほどの弱酸性に当たる。
- 酸 性:pH値3未満
- 弱酸性:pH値3以上~6未満
- 中 性:pH値6以上~7.5未満
- 弱アルカリ性:pH値7.5以上~8.5未満
- アルカリ性:pH値8.5以上
どちらともいえない中性(pH6~7.5)をはさんで弱アルカリ性泉(pH7.5~8.5未満)、アルカリ性泉(pH8.5以上)、弱酸性泉(pH3~6未満)、酸性泉(pH3未満)に分類される。
温泉界では、pH6〜7.5未満が中性。温泉の世界は、わりと懐が深い。人間社会なら「白黒つけろ」と言われるところを、温泉界は「まあpH6から7.5くらいなら中性でええやん」と言ってくれる。
pH値別・温泉のキャラ早見表
| pH分類 | キャラ | 肌ざわりの傾向 |
|---|---|---|
| 酸性 | 攻めのリセット番長 | ピリピリ、さっぱり |
| 弱酸性 | 保健室の先生 | 肌に近く、やさしめ |
| 中性 | みんなの実家 | 刺激少なめ、入りやすい |
| 弱アルカリ性 | 美肌レンジャー見習い | なめらか、すべすべ |
| アルカリ性 | 角質そうじ職人 | つるつる、強いと乾燥注意 |
pH値を身近なもので例えると?

pH値だけ見ても、正直ピンとこない。そこで身の回りのものに例えると、だいたいこんなイメージだ。
胃液やレモンは酸性。石けん水や石灰水はアルカリ性。アルカリ性の温泉がツルツルする理由は、石けんに近い働きがあるからだ。
もちろん温泉は石けん水ではない。だが、アルカリ性のお湯は皮脂や古い角質に働きかけ、肌表面をなめらかに感じさせることがある。
一方、酸性の温泉は殺菌力・抗菌力のイメージが強く、ピリッとした刺激を感じることがある。肌に合えば頼もしいが、敏感肌には少々スパルタ教師である。
ちなみに、日本一pH値が高い温泉は、埼玉県・都幾川(ときがわ)温泉で、pHは11.3。もはや漂白剤に近いpH値。長野県の白馬八方温泉が11.5という噂もある。
逆に、日本一pH値が低い温泉は、秋田県・玉川温泉で、pH値は1.13。レモンを超えて、バッテリー液に近い。
pH値が高いほどツルツル?実はそれだけでは決まらない

ここが温泉好きで最も多い誤解。多くの人はこう思っている。
pH値が高い温泉ほど、肌がツルツルになる。
たしかにアルカリ性が強いほど、皮脂や角質に働きかけやすく、ツルツル感は出やすい。だが実際の肌ざわりは、pH値では決まらない。重要なのは、次の3つの成分だ。
炭酸イオン
炭酸水素イオン
ナトリウムイオン
とくに炭酸イオンが30mg以上ある温泉は、ぬるぬる・つるつる感が強くなりやすい。pH値がそこまで高くなくても、炭酸イオンや炭酸水素イオンが豊富なら「なんじゃこりゃ、ローションか?」という湯になることがある。
たとえば奥多摩にはpH10.1の「つるつる温泉」がある。名前からして、もう勝利宣言であるが、埼玉県の「梵の湯」には遠く及ばない。梵の湯は、pH8.5だが、悪魔的なツルツルを誇る。日本一のツルツル湯である和歌山県の「奥熊野温泉」も、pHは8.4だ。
理由は、梵の湯も、「奥熊野温泉」も炭酸イオンの量が桁違いだからである。
温泉のツルツル度は、pH値 × 炭酸イオン × 炭酸水素イオン × ナトリウムイオン × 鮮度みたいな総合格闘技。
pH値は大事。でも、pH値だけでは湯船のドラマは語れない。
炭酸泉を探すならpH値もチェックせよ

もうひとつ。温泉好きが騙されやすいものがある。「高濃度炭酸泉」という言葉に釣られてノコノコ出かけ、「あんまり大したことなかったな」とガッカリするケース。
実は、pH値は、炭酸泉を探すときにも重要である。炭酸は、弱酸性〜中性の環境で安定しやすい。逆にpH7.5以上のアルカリ性寄りになると、炭酸が逃げやすくなる。つまり、炭酸泉らしいシュワシュワ感や泡つきを期待するなら、温泉分析書でpH値を見て、
弱酸性、中性あたりになっているかをチェックしたい。
もちろん、炭酸泉は、源泉温度と浴槽の広さもチェックする必要がある。
よくある質問:温泉のpH値Q&A
Q. 温泉のpH値とは何ですか?
温泉のpH値とは、その温泉が酸性・中性・アルカリ性のどれに近いかを示す数字。温泉分析書には「pH値」や「水素イオン濃度」として記載される。
Q. 美肌の湯はpH値が高い温泉ですか?
アルカリ性の温泉は、皮脂や古い角質に働きかけて肌をつるつるに感じさせることがある。ただし、美肌感やツルツル感はpH値だけでなく、炭酸イオン、炭酸水素イオン、ナトリウムイオンなどの成分に左右される。
Q. pH値が高いほど良い温泉ですか?
違う。pH値が高い温泉はアルカリ性が強く、ツルツル感が出やすい一方で、皮脂を落としすぎて乾燥することもある。良い悪いではなく、温泉の個性として見るべき。
Q. 酸性温泉は肌に悪いですか?
NO。酸性温泉は殺菌力や抗菌力があるとされ、湯治で親しまれてきた温泉も多い。ただし刺激が強いことがあるため、敏感肌の人や肌トラブルがある人は注意したい。
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