湯遊白書〜そこに温泉があるから

ここは天国かい?いや、温泉だよ。日本、アジア、世界の温泉を巡ります。日本、アジア、世界の温泉を巡ります。2017年11月23日、温泉ソムリエ協会認定「温泉ソムリエ」の資格を取得。本ブログの情報は平成29年8月発行の『温泉ソムリエ テキスト』(著者・遠間和広)に基づいています。

大手町温泉「SPA大手町」〜湯と大都会の交差点

大手町温泉「SPA大手町」〜湯と大都会の交差点

温泉とは静かで、やさしくて、それでいて得体の知れないもの。大都会のど真ん中・日本経済の中心地・大手町に天然温泉が湧いているのだからすごい。どこから顔を出してきたのやら。

2025年2月28日、16時半。三菱一号館美術館で「ビアズリー展」を観た帰り。サロメの世界に浸った余韻を抱えたまま、カフェでティラミスでも食べながら整理しようと思っていたのだが、生憎、店が閉まっていた。こんなとき、どこに感情の行き場を求めるか。身体が求めたのは甘味ではなく、湯だった。

大手町温泉「SPA大手町」〜湯と大都会の交差点

東京駅から歩いて大手町へ向かう。10分ほどの道のり。寒いのか暑いのかわからない空気。春と冬の狭間で迷子になった天気。うっすら汗ばむ。

大手町温泉「SPA大手町」〜湯と大都会の交差点

途中、読売新聞社前にある箱根駅伝の「絆の像」を眺める。あの襷を繋ぐ男たちのドラマ。走ることは孤独の中にありながら、誰かと繋がる行為。自分も温泉と繋がろう。そんなことを考えながら、「SPA大手町」へと足を踏み入れる。

大手町温泉「SPA大手町」

大都会の天然温泉「SPA大手町」があるのは、大手町フィナンシャルシティ グランキューブの地下1階。

大手町温泉「SPA大手町」〜湯と大都会の交差点

天然温泉がある雰囲気ではない。本当にあるのだろうかと、何度も案内板を確かめる。

大手町温泉「SPA大手町」〜湯と大都会の交差点

あった。アンダーグラウンドに。温泉入浴のみ90分、平日は1,100円。都会の真ん中にある温泉にしては手頃な価格。迷うほどじゃない。1100円で救われるのなら、安いものだ。大手町温泉「SPA大手町」〜湯と大都会の交差点

ロッカーキーがついたリストバンドを渡され、トレーニングルームを通り過ぎ、長い廊下を歩く。リストバンドを着けると東京の一部になれた感覚になる。

大手町温泉 湯と大都会の交差点

黒褐色の湯が目に飛び込む。まるでビアズリーの世界。モダンなデザインの空間に、クラシック音楽が静かに流れている。何かの交響曲かわからない。ただ、温泉の音は知っている。湯がわずかに揺れる音。静かな水の響き。あらゆるものが忙しく動き回る大手町の中で、ここだけ時が止まったように感じる。

塩化物強塩温泉をペロッと飲泉。かなり塩が強い。想像以上だ。これが東京湾の塩か。目を閉じてみると、都会の喧騒が薄まり、遠くのほうで波の音が聞こえるような気がした。もちろん、それはただの錯覚だ。でも、こういう錯覚は嫌いじゃない。

皇居を走り終えたランナーたちも利用するが、この時間に他の湯客は少ない。1時間ほど浸かっていると、浴槽を独占できる時間もあった。どこか静謐な雰囲気のなか、思考はゆっくりと整理されていく。2月は何かと慌ただしかった。人間は生きるために、どうでもいいことを山ほどやらなければならない。会話、仕事、計算、約束、報告、計画、後悔。そういったものが、じんわりと湯の中で分解されていく。

「SPA大手町」の唯一の欠点を挙げるとすれば、泊まれないことだ。新宿の「テルマー湯」のように、仮眠スペースがあれば最高なのに。温泉に入って、そのまま5000円くらいで一泊できたらと思う。

しかし、そういうわけにはいかない。だから、仕方なく服を着る。風呂から上がったあとの服を着るという行為は、なぜかいつも虚しい。

外に出ると、もうすっかり日が暮れていた。東京駅方面へ歩く。ビアズリーの白と黒の世界。湯に沈めた自分。温泉が消化してくれたものが、何かは分からない。ただ、身軽になったことは確かだった。大都会の温泉でのひとときが、少しだけ余白を残してくれる。その余白が、明日の何かを受け入れるスペースになる。

SPA大手町の温泉の特徴

SPA大手町の温泉の特徴

  • 泉質:含よう素-ナトリウム-塩化物強塩温泉(高張性・中性・温泉)
  • 泉温:36.5℃
  • 浴槽:石
  • 種類:水風呂、ぬる湯、温泉
  • pH値:7.3
  • 湧出量:毎分240リットル
  • 湯の色:淡褐色
  • 成分総計:2714mg

2016年5月にオープンした「大手町温泉」は、地下1500mから湧き出る源泉。主成分は食塩で、黒く、とろみのあるお湯。保温効果が高く、冷え症や疲労回復に効果・効能がある。黒色は海の成分が分解して濁り湯になったと思われる。浸透圧は高張性で濃く刺激が強く、肌に成分が浸透しやすい。浴槽は石で、水風呂(20度前後)、ぬる湯(36度前後)、温泉(41度前後)の3種類。

成分に注目すると、「よう化物イオン」が38.4mgと東京でも屈指の多さ。湯に10mg以上あると泉質が「含よう素泉」になり、池袋の豊島園にある「庭の湯」は20.2mgなので、それよりも多い。ただし、圧倒的に塩の量が多いため、イソジンのピリッとした薬味はしない。

すごいのが塩分の量。ナトリウム+塩素イオン(塩化物イオン)が240ミリバル/kg以上は「強塩泉」に分類されるが、大手町温泉は858.4ミリバル。全部の成分の90%以上を塩が占める。おそらく、この数値は日本の温泉全体でもトップ10に入ると思われる。

その他は、保湿成分「メタけい酸」が118.2mgあるので「美人の湯」の分類の仲間入り。pH値が7.3の「中性」なので、これがアルカリ性だとツルツルの湯になっていた。ただし、ボディソープで洗体したあと、ぬる湯の浴槽に浸かるとスベスベ感がすごい。湯上がりは、目の前の「銀座 篝」で鶏白湯ラーメンに舌鼓を打ってもらいたい。

SPA大手町のアクセス

項目 内容
名称 SPA大手町(大手町温泉)
住所 東京都千代田区大手町1-9-2 大手町フィナンシャルシティ グランキューブB1F
電話番号 03-6262-5188
アクセス 東京メトロ「大手町駅」直結/JR「東京駅」丸の内北口より徒歩約10分
駐車場 施設の専用駐車場なし(周辺コインパーキング利用可)
営業時間 平日 7:00〜22:00/土曜・休日 10:00〜20:00(最終受付は終了1時間前)
定休日 不定休(施設メンテナンスにより休館あり)
入館料金 温泉入浴のみ 90分 1,100円(平日料金/休日は変動の可能性あり)
泉質 含よう素-ナトリウム-塩化物強塩温泉(高張性・中性・温泉)
泉温 36.5℃
pH値 7.3(中性)
湧出量 毎分240リットル
特徴 黒褐色の強塩泉、保温効果・疲労回復効果、都会の地下で静謐な温泉空間

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