
温泉地の名前に“品”を感じることがある。湯河原(ゆがわら)という響きには、不思議と風格がある。喧騒の裏側にそっと佇む控えめな余白。知る人ぞ知る歴史の深み。湯河原温泉は神奈川県足柄下郡湯河原町にある温泉。関東最古の湯であり、『万葉集』に登場するほど歴史が古い。

発見者は狸、役小角、行基など複数説あるが、湯河原駅ではタヌキ説を採用している。真偽はともかく、駅前に鎮座するタヌキ像が「湯の守り神」であることは間違いない。

湯河原町は千歳川の恵みを受け、川沿いの桜並木が有名。近隣の住民の散歩コースとなっている。

有名な温泉地であり、町をあげてPRしているが、お隣が日本有数のリゾート・熱海ということもあってか、驚くほど静か。

大好きなワイン漫画『ソムリエール』の天才ソムリエ片瀬丈の実家が湯河原であり、漫画でも同じ景色が登場した。

憧れの湯河原温泉の駅に降り立ったのは2025年4月9日、水曜日。朝から熱海の美術館を2つ、そのあと熱海温泉に入浴した帰り。熱海駅から一駅なので寄ることにした。
現在では、「湯河原温泉」といえば、駅から5キロほど離れた「奥湯河原」の温泉街を指すが、時間的にも金銭的にも余裕なし。駅近の日帰り温泉を探すことにした。

湯河原温泉は石を投げれば湯宿に当たるが、宿泊のみで日帰りをやっている所が少ない。源泉かけ流しの湯宿で「日帰りの入浴はできませんか?」とダメもとで訊いたが、やはり断られた。駅から徒歩2分の「ホテル城山」が唯一、日帰り入浴をやっていた。

創業は1999年1月20日と新しく、日光や那須、八ヶ岳などのリゾート地にも宿泊施設を構える。

レストランから眺める庭園が美しく、食事をしてみたくなる。

屋上庭園からは湯河原の街並みや相模湾が望め、日帰り温泉だけではもったいない湯宿。

これだけ立派なリゾート温泉なので、入浴料金は1870円と高め。それでも宿泊せずに泊まれるのだから感謝。タオルや浴衣がセットでなっており、入浴後もホテル館内でくつろげる。つくづく夕方に来てしまったのが惜しい。

湯処は4階にあり、その時点で源泉かけ流しでないことがわかる。加水、加温、循環もあり。本来、温泉ソムリエは敬遠する所だが、これだけ立派なホテルに日帰りで入れるだけで贅沢だ。

洗面所は清潔そのもの。

16時という曖昧な時間が幸いし、湯客はゼロ。熱海温泉に続いて独泉。

海の湯だが、加水もしているので塩の味はせず。

珍しいラドン温泉もあり。「放射能泉」または「ラジウム温泉」とも呼ばれる。山梨県が有名。

最も気持ちよかったのが露天風呂。全開放ではないが、山の空気が肌を撫でる。

海の湯と思えないほど、山の静けさに包まれた空間。時間は動いているのに、歴史が止まっているように感じる。町の空気も泉質のひとつ。
観光地として賑わう熱海と、もう一駅だけ足を伸ばした先にある湯河原。同じ“海の湯”でありながら、まったく違う顔を持つ。
多くの観光客で飽和している熱海の隣駅だから良い余白がある。温泉も絵画と同じく余白が重要。歴史に愛された湯。これが湯河原温泉か。いつか奥湯河原で、ゆっくり泊まりたい。
湯河原温泉「ホテル城山」の温泉分析書

- 泉質:ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉(含石膏-食塩泉)低張性・弱アルカリ性・高温泉
- 泉温:61.7℃
- 浴槽:石、木
- 種類:内湯、露天
- pH値:8.2
- 湧出量:不明
- 湯の色:無色透明
- 成分総計:1588mg
塩分が多い「塩化物泉」と、硫酸イオンが多い「硫酸塩泉」が合わさった分散型の泉質。旧泉質名の「石膏泉」はハリと弾力のある肌を作る。朝湯の癒しにはナンバーワンの泉質。メタけい酸が101mgなので「美人の湯」の分類に入る。
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