日本でいちばん小さい町・静岡県の西伊豆・松崎町にステキな温泉宿がある。その名も通称"長八の宿"、地元の人は正式名称の「山光荘(さんこうそう)」と呼ぶ。
駿河湾と富士山を一望できる伊豆松崎町の港にあり、もとは漁師の大網元が造った宿。1966年8月の開館なので、2年後には60周年。昭和42年8月に漫画家つげ義春が訪れ、一躍、全国区になった。
昭和2年生まれの女将さんが振る舞う料理が評判だったが、現在は高齢で素泊まりのみ。宿泊の予約が入ったとき、東京在住の娘さんが松崎に里帰りして旅館を手伝うという物凄い運営だ。
お孫さんが静岡で板前をしているらしいが、継ぐのかは未定。果たしてどうなるか。宿は運営が大変だ。
重厚感と落ち着きのある団欒所。入江長八が彫った達磨の像がある。
それより凄いのがロビーにある《寒牡丹》。これはぜひ生で観てほしい。日本のあらゆる芸術品の中でもトップクラスの作品だ。長八の凄さは別のブログでたっぷり語っているので、ぜひ読んでください。最後に紹介します。
この日は素泊まり7700円の龍の間に泊まった。温泉は24時間入っていい。泉質はカルシウム-ナトリウム-硫酸塩温泉。「硫酸塩泉」とも称し、無色透明でサラッとした肌触り。インパクトは少ないが優しい。肌の蘇生効果から「若返りの湯」と呼ばれる。伊豆の湯ヶ野にある福田家(伊豆の踊り子の舞台)も同じ泉質。pH値(水素イオン濃度)が8.6なのでアルカリ性の湯。7.5以上なので美肌効果のあるツルツルの湯。
女性は上品な伊豆石の風呂、男風呂は勇ましい岩風呂。飲泉すると無味だが、浮遊力がある。目を閉じると岩の感触と浮遊感で海にプカプカ浮いている気分。この温泉の真価は朝風呂にある。『地獄の黙示録』でギルモア大佐が「朝のナパーム弾は格別だ」と言ったが、目覚めに浴びる温泉にはかなわない。岩風呂に首を預けて目を閉じると、そのまま二度寝してしまうかのようだ。いや、いっそこのまま眠ってしまおうか。やっぱり朝のナパーム弾は格別だ。
名称 | 山光荘(さんこうそう) |
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住所 | 〒410-3611 静岡県賀茂郡松崎町松崎284 |
電話 | 0558-42-1047 |
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