湯遊白書〜そこに温泉があるから

ここは天国かい?いや、温泉だよ。日本、アジア、世界の温泉を巡ります。日本、アジア、世界の温泉を巡ります。2017年11月23日、温泉ソムリエ協会認定「温泉ソムリエ」の資格を取得。本ブログの情報は平成29年8月発行の『温泉ソムリエ テキスト』(著者・遠間和広)に基づいています。

硫黄泉とは?クセになる卵の匂い、美肌を司る温泉界の“魔王の湯”

硫黄泉とは?クセになる卵の匂いの正体と“薬湯”の頂点

温泉は「十湯十色」と呼ばれるように、泉質は全部で10種類あり、泉質を知っておくと温泉の愉しみがバズりまくる。今回紹介するのは、腐った卵のような硫化水素臭がするのが特徴で、温泉の代名詞である「硫黄(いおう)泉」。「卵の匂い」の理由、驚くべき効能(美肌・殺菌)を徹底的に掘り下げる。

硫黄泉とは?なぜ「卵の匂い」がする? 

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硫黄泉は、温泉水の中に硫黄成分がはっきり多いタイプの泉質。日本では「温泉法」と環境省の基準で、総硫黄(H₂S・HS⁻・S₂O₃²⁻の合計)が 2mg/kg 以上あると「硫黄泉」になる。総硫黄は、難しい化学式の足し算だと思えばいい。卵の匂いの元である硫化水素(H₂S)や、その仲間のイオンがどれくらい入っているかの数値である。

卵の匂いがするのは「硫化水素型」

硫黄泉とは?クセになる卵の匂いの正体と“薬湯”の頂点

硫黄泉は大きく2タイプに分かれる。名前は難しく見えるが、体感で覚えるとわかりやすい。

硫化水素型

画像引用:酸ヶ湯温泉

主役は硫化水素(H₂S)。温泉に顔を近づけると、ゆで卵が腐ったような独特の匂いが強く感じられる。お湯は無色透明~うっすら白濁。肌あたりはややシャープで、人によってはピリッと刺激を感じることがある。青もりの酸ヶ湯温泉の男女別の「玉の湯」が硫化水素型の硫黄泉になる。

硫黄型

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溶けているのは単体の硫黄(S)やその微粒子が中心。匂いは穏やかで、見た目は乳白色に濁ることが多い。肌ざわりはまろやか。ミルキーブルー/乳白色の湯がこのタイプ。かつて長野県の乗鞍岳の麓に「丘の上ヒュッテ」という日本一の湯宿があった。残念ながら、経営者の方が亡くなって廃業になってしまったが、ここが硫黄型の硫黄泉だった。

白濁する理由

硫黄泉とは?クセになる卵の匂いの正体と“薬湯”の頂点

硫化水素などの硫黄成分は、空気(酸素)に触れると酸化して、目に見えないレベルの硫黄の微粒子(コロイド)に変わる。これが水中に漂うと光を散らすので、湯が乳白色に見える。時間がたつと透明だった湯が白くなることがあるのは、この変化が進んだサインだ。

エメラルドグリーンに見える理由

万座温泉・万座高原ホテル

透明~乳白の間で、ときどき青緑やエメラルドに見える湯がある。これは、微粒子のサイズや溶けているミネラル(鉄・アルミなど)、pH、光の当たり方の組み合わせで光の散らばり方が変わるから。水族館の水槽の色が照明で変わって見えるのと同じ理屈で、温泉成分の条件がそろうと青緑が強調される。

硫黄泉の驚くべき効能と効果

硫黄泉は「刺激が強い」とよく言われる。これは、硫黄が水よりも10倍以上も浸透しやすい成分だからだ。そのため、肌の奥まで届きやすく、毛細血管を広げて血行を促す働きが強い。この“刺激”がうまく働けば、肌の代謝が高まり、いわゆる健康美人をつくる助けになる。

【健康面】古くから伝わる硫黄泉の主な効能

● 殺菌作用

硫黄泉のいちばんの特徴は、強い殺菌作用。温泉中の「硫化水素(H₂S)」には細菌や真菌(カビ)の増殖を抑える働きがあり、古くから皮膚病・湿疹・水虫・アトピー性皮膚炎などの改善湯治に使われてきた。

ただし、刺激が強いのも事実。肌が敏感な人や炎症がひどい場合は、短時間で切り上げるか、ぬるめの湯で入るようにしたほうがいい。入浴後はしっかり保湿して皮膚を守ることも大切だ。

● 血行促進

硫黄成分は皮膚から吸収されて毛細血管を広げる作用がある。血の巡りが良くなることで、冷え性・高血圧・動脈硬化・慢性関節痛などの改善が期待できる。血行が促進されると代謝も上がり、肩こりや腰痛の緩和にもつながる。硫黄泉に入ると体の芯までポカポカと温まるのは、まさにこの効果によるものだ。

● 解毒・デトックス効果

硫黄は昔から「体の毒を出す」と言われてきた。硫黄泉に入ると発汗が促され、老廃物や余分な皮脂を自然に排出できる。血流が活発になることで肝臓や腎臓の働きをサポートし、むくみ解消や疲労回復にも役立つと考えられている。現代風に言えば、“温泉版のデトックス”。サウナが苦手な人でも、硫黄泉の温浴なら穏やかに代謝を高められる。

【美容面】「美肌の湯」と呼ばれる理由

硫黄泉とは?クセになる卵の匂いの正体と“薬湯”の頂点

硫黄泉は健康だけでなく、美容の面でも人気が高い。多くの温泉地で「美肌の湯」と呼ばれる理由は、次の3つにある。

● 角質を柔らかくする(ピーリング効果)

硫黄成分には古い角質をゆるめて落とす作用がある。これは化粧品でいう“ピーリング”と似た仕組みで、入浴を続けることで肌表面が滑らかになり、くすみがとれる。ただし、やりすぎは禁物。長時間の入浴や熱すぎるお湯は、必要な皮脂まで落としてしまうので注意しよう。

● メラニン生成を抑える(美白効果)

硫黄はメラニンの生成を抑える作用があるとされており、シミやそばかすの予防にもつながるといわれる。硫黄泉が「美白の湯」と呼ばれるのは、この作用が期待されるからだ。

● シミ・ニキビ予防への期待

硫黄泉の殺菌効果により、毛穴にたまった皮脂や雑菌が減りやすい。これがニキビや吹き出物の予防につながる。さらに角質が整うことで、化粧水やクリームの浸透力も高まる。入浴後に保湿ケアをきちんとすれば、湯上がり肌がしっとりと落ち着くのを感じられるはずだ。

pH(酸性・アルカリ性)による違いと特徴

硫黄泉とは?クセになる卵の匂いの正体と“薬湯”の頂点

硫黄泉には、性質の違う2タイプがある。お湯のpH(酸性・アルカリ性)によって、肌への作用がかなり変わる。入浴時に温泉分析書を見てみよう。

● 酸性硫黄泉:殺菌力が強く、刺激的な湯

万座温泉・万座高原ホテル

pHが低い酸性硫黄泉は、強い殺菌力がある。ニキビ・水虫・皮膚炎などの細菌を抑える効果が高く、「肌を清潔に保つ湯」として知られている。その分刺激が強く、長湯には向かない。入浴後は皮脂膜が減るため、乾燥肌の人は必ず保湿を。代表例は万座温泉。

● アルカリ性硫黄泉:肌がつるつるになる湯

画像引用:やまと屋

pHが高いアルカリ性硫黄泉は、入るとぬるぬる・つるつるとした肌ざわりがある。これはアルカリが皮脂をやわらげ、古い角質を落とすからだ。洗顔したあとのように肌がすべすべになるため、女性に人気が高い。こちらも入りすぎると乾燥しやすくなるため、入浴後の保湿ケアは欠かせない。山形県の「赤湯温泉」がアルカリ性硫黄泉にあたる。

おすすめの硫黄泉の聖地・名湯

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東の横綱:万座温泉(群馬)

画像引用:万座高原ホテル

  • 魅力:湯に溶けてしまいたい国宝の湯
  • 泉質:酸性-含硫黄-ナトリウム・マグネシウム-硫酸塩-塩化物泉温泉(硫化水素型)
  • 浴槽:石風呂、岩風呂
  • 泉温:62.0℃
  • pH値:2.1
  • 開業:1957年
  • 利用:日帰り○、宿泊○
  • 場所:群馬県吾妻郡嬬恋村万座温泉

 

万座の泉質は、酸性の硫黄泉(硫化水素型)に加えて塩化物泉の性格も併せ持つ、いわば“マルチ型”。ブレンドワインのような奥行きがある。

特徴を一言でいえば「クセ強」。成分は草津温泉とほぼ同じで、利き温泉をしても見分けがつかない。pHは2.0前後と強い酸性で、硫黄含有量は全国トップクラス。マグネシウムも多く、苦味を感じる。さらに、鉄(II)イオンモ6.83mg入っており、金属の匂いを感じる。「鉄」のが多いと湯冷めしにくく、体が温まる。温熱効果が高い。

100mg以上で"美人の湯"と呼ばれる「メタけい酸」も205mgあり、温泉では最も珍しい成分の二酸化炭素も51.3mg入っている。

温泉成分が満遍なく入っており、泉質においても「万座」の名がふさわしい。

万座温泉・万座高原ホテル

温熱・殺菌・美肌のバランスが高く、刺激があるのに湯冷めしにくい。まさに“強さと優しさ”が同居する泉質だ。

万座温泉・万座高原ホテル

標高1,800m、空気は薄く乾いている。そこに硫黄を豊富に含む酸性泉が湧く。湯に身を沈めて外気を浴びるだけで、体温と冷気が交互に揺れる。夜は空が近く、湯気の向こうに満天の星が浮かぶ。ここでは湯と星が同じ高さにある。

西の横綱:別府温泉・明晩温泉(大分)

画像引用:たびらい

  • 魅力:ブルゴーニュの特級畑の泥湯
  • 泉質:酸性明緑礬泉-硫黄泉
  • 浴槽:岩(露天風呂)
  • 泉温:測定せず
  • pH値:2.45
  • 開業:1973年
  • 利用:日帰り○、宿泊○
  • 場所:大分県別府市明礬5

西の横綱・別府温泉。広大な温泉郷の王者が、明礬温泉・紺屋地獄。名前からして只者ではない。有名な泥湯は「酸性泉」で、内湯(コロイド湯)が硫黄泉になる。帰ってから1週間近く硫黄(硫化水素ガス)の匂いがとれなかったほど。

画像引用:たびらい

別府湾に抱かれていると錯覚。ペロッと飲泉しても特に味はない。ただ、他の温泉とはまるで違う。気持ちよさの質が別格で、様々な旨味が複雑に絡み合った上質なワインのように奥深い。単純に「気持ちいい」だけではなく、何層にも重なった心地よさがある。できることなら、ここだけで何時間でも浸かっていたい。

紺屋地獄では、石鹸やシャンプーの使用は禁止されている。温泉を濁してしまうからだろう。実際に硫黄泉に浸かれば、その理由がすぐに理解できる。ここはただの温泉ではない。五感すべてで味わう、特別な湯なのだ。

硫黄泉に関するQ&A

硫黄泉とは?クセになる卵の匂いの正体と“薬湯”の頂点

Q. 「硫黄入浴剤」は本物とどう違う?

A. 本物の硫黄成分(硫黄や硫化水素ナトリウム)が入ったものと、香りだけ再現したタイプがある。成分表に「硫黄」や「硫化水素」と書かれていれば本物。匂いは強めで、浴槽の金属を変色させることもあるので使用後は洗い流そう。人工香料タイプは刺激が少なく扱いやすい。

Q. 硫黄泉は飲んでも大丈夫?

A. 基本的にNG。硫化水素は高濃度だと有害。「飲泉可」と明示された温泉だけ安全に管理されている。飲泉する場合は少量を守ること。

Q. 服についた硫黄の匂いを取るには?

A. まずは風通しの良い場所で外干しする。まだ残る場合は、酸素系漂白剤や重曹+クエン酸で洗濯すると効果的。時間が経つと自然に匂いは薄れる。

Q. なぜ「薬湯」と呼ばれるの?

A. 古くから傷や皮膚病に効くと信じられ、神聖な湯として祀られてきたため。登別・草津などでは今も「神の湯」「地獄の湯」と呼ばれ、昔の湯治文化の名残として受け継がれている。「硫黄泉は刺激の中に美と健康を育てる力がある湯」ということ。自然のミネラルと化学の力が生み出す、まさに“生命の湯”なのである。

刺激と癒しの二刀流

硫黄泉とは?クセになる卵の匂い、美肌を司る温泉界の“魔王の湯”

温泉に入った瞬間、「うわッ……腐った卵の匂い!」という衝撃で脳をガツンと揺らしてくる泉質がある。

そう、硫黄泉(いおうせん)。十湯十色の世界において、硫黄泉は 唯一無二のカリスマ だ。香り(匂い)の強さ、浴感の印象、美肌効果、殺菌作用。どれを取っても“極端”。温泉全ジャンルの中で もっとも個性が尖った泉質 とも言える。

入っただけで温泉地のポスターみたいな気分になり、浴後は肌がつるんとワントーン明るくなる。しかし刺激も強い。だからこそ魅力がある。

硫黄泉とは、温泉界の魔王であり、薬師であり、美肌メンターなのだ。

硫黄泉とは、簡単に言うと、“総硫黄(H₂S・HS⁻・S₂O₃²⁻)が2mg/kg以上ある、卵の匂いをまとった湯”である。

温泉の成分表に「硫化水素イオン」などの難しい字が並ぶが、全部まとめて「硫黄が濃い湯」 と理解すればOK。

湯船に近づいた瞬間に鼻を刺激する 硫化水素(H₂S) がスター選手。あれが「卵の匂い」の正体であり、硫黄泉を“温泉の象徴”たらしめている。

硫黄泉の二大派閥

硫黄泉とは?クセになる卵の匂い、美肌を司る温泉界の“魔王の湯”

硫黄泉は大きく 2タイプ に分かれる。

◆ ① 硫化水素型(卵!刺激!シャープ!)

湯に顔を近づけると、あの 腐卵臭 がズドンと来るタイプ。

  • 無色透明〜薄い白濁
  • シャープな浴感
  • 人によっては肌がピリッとする
  • 刺激は強め

硫黄泉の“攻撃力担当”。初見のインパクトは温泉界トップクラス。

◆ ② 硫黄型(乳白色!やさしい!まろやか!)

単体の硫黄(S)や微粒子が主役で、香りは穏やか。

  • 白濁・ミルキーブルー
  • まろやかでやさしい肌ざわり
  • 湯の見た目が美しい
  • 浴感は柔らかい

“美しい白濁美”をつくるアーティスト担当である。

白濁の理由:湯が「光を散らしている」から

硫化水素が空気に触れると酸化し、肉眼では見えない硫黄の微粒子(コロイド) が生まれる。これが湯の中をただようことで、光が乱反射し、ミルキーブルー~乳白色に見える。透明だった湯が後から白く濁るのもこの現象。

硫黄泉の真の力:殺菌 × 美肌 × 温熱

硫黄泉の何がすごいのか?

それは、刺激の強さが “効果の強さ” に直結していること。

硫黄は水の10倍以上も肌に浸透しやすい。その結果、殺菌作用(温泉界で最強クラス)、血行促進(毛細血管を広げる)、解毒&デトックス(“抜ける”感覚の正体)など、硫黄泉は刺さる。

pHで「湯の性格」がガラッと変わる

硫黄泉の世界は、酸性かアルカリ性かでキャラが激変する。

◆ 酸性硫黄泉(刺激:強/殺菌力:最強)

代表:万座温泉、草津温泉など。刺激は強いが、効能も圧倒的。

◆ アルカリ性硫黄泉(刺激:弱/美肌力:最強)

代表:山形・赤湯温泉など。ぬるっとした浴感で、入った瞬間からつるつる。
肌の角質をやわらかくし、重曹泉とはまた違う“硫黄系スベスベ” を実感できる。

硫黄泉とは“刺激と美のカリスマ”である

硫黄泉とは?クセになる卵の匂い、美肌を司る温泉界の“魔王の湯”

硫黄泉とは何か?

それは、香りで圧倒し、肌を磨き、血を巡らせ、老廃物を抜き、人を健康美へ引きずり込む。温泉界のカリスマ泉質 である。

刺激の裏にある圧倒的な美肌&殺菌力。白濁する湯の神秘性。身体の芯まで届く温熱効果。硫黄泉に浸かると、「温泉って……これだよな」と膝を打ちたくなる。

刺激と癒しの二刀流。温泉の“原風景”を体現する湯。
あなたの温泉旅に、ぜひこの“魔王の湯”を加えてみてほしい。世界が、匂いごと変わる。

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