
東京は超高層ビルが林立する大都会でありながら、地下には火山帯と海の記憶が眠り、各地で個性豊かな“本物の湯”が湧く。
駅直結から街角の名湯まで、アクセスの良さと泉質の多彩さは全国屈指。忙しない東京の時間に、湯は確かな余白をつくる。ここでは、登山帰りの一浴も、仕事帰りの90分スパも、週末のととのいも、すべてが「都内で完結」する。地質と歴史が編んだ温泉都市・東京の実力を、ランキングで確かめる。
東京の天然温泉ランキング
1位:高尾山温泉・極楽湯(八王子市)

高尾山の麓にある「京王高尾温泉 極楽湯」は、登山客や観光客を癒すために2015年に誕生した天然温泉施設だ。高尾山口駅直結という抜群のアクセス。登山後はもちろん、朝風呂や夜風呂など日常の合間にも立ち寄れる利便性がある。営業時間も朝8時から夜23時までと長く、クライマーや観光客に幅広い楽しみ方を提供している。

泉質は「アルカリ性単純温泉(pH9.9)」で、関東でも屈指のツルツル感を誇る。炭酸イオンも多く含まれており、肌をなめらかに整える美肌の湯として人気。湧出温度は26.2℃と低温だが加温され、無色透明のやさしい湯で万人に向く。

館内では「露天炭酸石張り風呂」や「檜風呂」「替わり風呂」など多彩な浴槽を用意。ジャスミンやハチミツ檸檬など趣向を凝らした替わり風呂は目でも楽しめ、檜風呂ではマイクロバブルが木の香りと調和し極上のリラックス体験を与える。さらに水風呂も用意され、登山で疲れた筋肉をしっかりアイシングできるのも特徴だ。

「天然」「日替わり」「炭酸」「檜」「水風呂」といった多彩な湯を一度に楽しめるこの施設は、まさに“極楽指数”の高い名湯。アクセス・泉質・多彩さの三拍子が揃った、高尾山観光に欠かせない立ち寄り湯である。
高尾山温泉(極楽湯)の情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 京王高尾温泉 極楽湯 |
| 住所 | 東京都八王子市高尾町2229-7 |
| 電話番号 | 042-663-4126 |
| アクセス | 京王線「高尾山口駅」直結(徒歩0分) |
| 駐車場 | あり(有料・施設利用者は割引サービスあり) |
| 営業時間 | 8:00〜23:00(最終受付 22:00) |
| 定休日 | 年中無休(メンテナンス休業あり) |
| 入館料金 | 平日・土日祝とも:通常1,100円(繁忙期1,200円) |
| 泉質 | アルカリ性単純温泉(低張性・アルカリ性・低温泉) |
| 泉温 | 26.2℃(加温あり) |
| pH値 | 9.9 |
| 特徴 | ツルツル美肌の湯、露天炭酸石張り風呂、檜風呂、替わり風呂、水風呂など |
2位:豊島園・庭の湯(練馬区)

「豊島園 庭の湯」は、大江戸線「豊島園駅」から徒歩すぐ、都心にいながら本格的な天然温泉が楽しめる名湯だ。1,200坪の広大な日本庭園を背景に、天然温泉を含む6種の風呂と水着で入れるバーデプールを備える。

地下1,445mから湧出する泉質は「含よう素-ナトリウム-塩化物強塩温泉」。ヨウ素を通常の倍以上含み、黒褐色の湯が特徴で、強い殺菌力と代謝促進作用により「体質改善の湯」と呼ばれる。入浴すれば全身が芯から温まり、湯あたりの強さに圧倒されるが、その心地よさは都内随一。

まず試したいのが深さ90センチの水風呂。そこから低温の含よう素泉へ移れば、血流が活性化し、じんわりと体に効いてくる。

画像引用:庭の湯
寝浴では無重力感覚に包まれ、α波による深いリラックスを体験でき、炭酸泉ではシュワシュワとした発泡感が含よう素泉との絶妙なコントラストを演出する。

露天風呂では日本庭園を眺めながらゆったりと浸かることができ、陶製の一人風呂で独占する時間は格別。静かな住宅街にひっそりと佇むこの施設は、東京にいながら極上の湯治気分を味わえる唯一無二の存在。庭園の四季の風景とともに、心身を癒すひとときを過ごせる東京の天然温泉ランキング第2位にふさわしい名湯だ。
庭の湯(豊島園)の情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 住所 | 東京都練馬区向山3-25-1 |
| 電話番号 | 03-5984-4126 |
| アクセス | 西武池袋線・豊島園駅 徒歩約2分 / 大江戸線A2出口 徒歩約2〜3分 |
| 駐車場 | 公式には「なし」とされており、公共交通機関推奨 |
| 営業時間 | 10:00~23:00(最終受付 22:00) |
| 定休日 | 不定休(メンテナンス等あり) |
| 入館料金 | 平日・土日祝・特定日で異なる(約2,200~2,800円程度) |
| ナイトスパ | 18時以降は割引料金適用あり(約1,600~2,200円) |
3位:大手町温泉(千代田区)

4位:前野原温泉・さやの湯処(板橋区)

「前野原温泉 さやの湯処」は、東京都板橋区の住宅街にありながら、源泉かけ流しの天然温泉を楽しめる希少な施設だ。2005年に創業し、以来、遠方からも温泉好きが訪れる人気の湯処となっている。

泉質は「含よう素-ナトリウム-塩化物強塩泉」で、ナトリウムイオンが324.1ミリバルと基準を大きく超える“強塩泉”。さらによう化物イオンは23.8mg含まれており、東京でも貴重な含よう素泉に分類される。

源泉は36.9℃、湯の色はほとんど透明に近いが、わずかに「うぐいす色」を帯び、強い浸透圧による湯あたりの実感がある。毎分27リットルの湧出量ながら、加水せず源泉かけ流しを実現しているのが大きな魅力だ。

施設内は、内湯に高濃度炭酸泉やジェットバスなどを備えつつ、真価を発揮するのは露天風呂とつぼ湯。露天は常に賑わうが、つぼ湯なら独泉を楽しめ、春の陽光を浴びながら心地よく浸かれる。屋根付きの寝ころび湯もあるが、太陽の光と一体になれる露天こそ、この温泉の真骨頂といえる。
生活圏にありながら、日常を超える体験を与えてくれる「前野原温泉 さやの湯処」。強烈な塩分とヨウ素の効いた源泉かけ流しを味わえる、東京を代表する名湯のひとつだ。
前野原温泉(さやの湯処)の情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 前野原温泉 さやの湯処 |
| 住所 | 東京都板橋区前野町3-41-1 |
| 電話番号 | 03-5916-3826 |
| アクセス | 都営三田線「志村坂上駅」から徒歩約8分 |
| 駐車場 | あり(約90台、遠方からの利用者多数) |
| 営業時間 | 10:00〜25:00(最終入館 24:00) |
| 定休日 | 不定休(メンテナンス休業あり) |
| 入館料金 | 平日 980円/土日祝 1,300円 |
| 泉質 | 含よう素-ナトリウム-塩化物強塩泉(高張性・中性・温泉) |
| 泉温 | 36.9℃ |
| pH値 | 7.4 |
| 湧出量 | 毎分27リットル |
| 湯の色 | うぐいす色(ほぼ無色透明) |
| 成分総計 | 22,160mg |
| 特徴 | 加水なし源泉かけ流し、強烈な塩味とヨウ素泉のピリッとした浴感、住宅街にありながら非日常を味わえる露天・つぼ湯 |
5位:蒲田温泉(大田区)

昭和12年(1937年)に創業した「蒲田温泉」は、東京・大田区にある下町情緒漂う黒湯の温泉。90年近い歴史を持ち、映画の街・蒲田の文化とともに歩んできた。施設は銭湯の趣を色濃く残し、豪華さはないが、日常の中で温泉を楽しむ「小さな贅沢」を提供している。

泉質は「ナトリウム炭酸水素塩・塩化物冷鉱泉」。黒湯の正体は海藻や植物が堆積してできたフミン酸で、柔らかい肌触りと高い保湿効果が特徴。肌をすべすべにし、湯上がりの爽快感を与える。黒褐色の湯は視界を奪うほど深い闇をたたえ、その独特な雰囲気に心まで沈められるような感覚を味わえる。

施設内には黒湯のほか、ジェットバスや電気風呂、水風呂もあり、下町ならではの多彩な浴体験が楽しめる。ただし浴槽は狭く、利用者が多いため譲り合いが必要。とはいえ、ここでは不思議なほど静寂が守られており、訪れる人々は黙々と湯に身を沈める。その無言の空気こそ、蒲田温泉ならではの魅力だ。

550円という銭湯価格で黒湯の天然温泉を堪能できるのも大きな魅力。タオルなどがセットになった「手ぶらセット」も用意され、気軽に立ち寄れる。昭和の香りを残すレトロな空間で、東京の下町文化とともに味わう温泉は、都会の喧騒を忘れさせてくれる。
蒲田温泉(大田区)の情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 蒲田温泉 |
| 住所 | 東京都大田区蒲田本町2-23-2 |
| 電話番号 | 03-3732-1126(みなさんに いいふろ) |
| アクセス | JR京浜東北線・東急線「蒲田駅」東口から徒歩約13分 |
| 駐車場 | なし(近隣にコインパーキングあり) |
| 営業時間 | 10:00〜24:00 |
| 定休日 | 年中無休 |
| 入館料金 | 入浴料 550円/手ぶらセット 800円 |
| 泉質 | ナトリウム炭酸水素塩・塩化物冷鉱泉 |
| 泉温 | 冷鉱泉(加温あり) |
| 湯の色 | 黒湯(フミン酸由来の漆黒) |
| 特徴 | 90年近い歴史ある黒湯温泉、銭湯価格で楽しめる、電気風呂や水風呂も完備、下町らしい静寂とレトロな雰囲気 |
東京に天然温泉が多い理由
温泉が湧きやすい地質構造

東京は関東平野の南端にあり、火山帯とプレート境界に近い位置にある。特に西側(多摩・奥多摩)は関東山地や富士火山帯の影響を受けており、火山活動で加熱された地下水が温泉として湧きやすい環境。東側(東京湾沿岸や城東エリア)でも、地下深くに古い火山灰層や地熱を蓄える層が存在し、深く掘削すれば温泉に到達する。
「黒湯」や「塩化物泉」が多い地層

東京の下町や湾岸部では、古代の海や植物が堆積した地層(泥炭層)が多く、これが黒褐色のモール泉(黒湯)の源になる。東京湾の堆積層には塩分が多く含まれているため、掘り当てると塩化物強塩泉になることも多い。
江戸時代から「井戸文化」が発達

江戸時代の東京(江戸)は、飲み水や生活用水を確保するために井戸掘りの技術が発達していた。地盤や水脈を見極める井戸掘り職人の知識や経験は、地下資源の活用にも応用され、温泉や鉱泉の発見につながった。当時から一部では湯治や温浴の文化が存在し、鉱泉を利用した湯屋も営まれていた。

明治時代に入ると、西洋医学の導入とともに温泉の効能が科学的に研究され、保養や療養を目的とした温泉利用が広がった。鉄道網の整備によって郊外や地方の温泉地にもアクセスしやすくなり、東京近郊の鉱泉も人気を集めた。大正時代には都市の近代化が進み、東京市内でも温泉を引き入れた浴場や旅館が現れ、温泉は庶民の娯楽と癒しの場として定着していった。
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